3BECAUSE 第48話
(もう…誰も死なせやしないんだ…

志保、大悟、エーコ…
レトインも!!


俺がやってやる…
俺が“エレクト”の力で全部!全員守ってやる!!!)



善の体が突然、光に包まれた。


「!!!
善!!それだ!!

“エレクト”の力!!


今度こそ、掴むんだ善!!」





3BECAUSE

第48話
 「覚醒」





(力が…みなぎってくる…!!

力を…制御しきれねぇ!!)


善の体が光に包まれる。

すると今度は…


「来い!!善!!

遠慮はいらん!全力で来い!!」


レトインの体も光に包まれた。


「レトイン!!


(来いって…いいのか…?

どうなっても知らねぇぞ!?)」


善とレトイン

“エレクト”を持つ同士のぶつかり合い。


(今はうまくコントロールできないでいるだろう?

かまわん。俺が受け止める…


これを機に、コツを掴むんだ善!!)



善は叫びながら、レトインに向かって力を放った。


「うわぁぁぁっ!!!」


瞬時に解き放たれる炎から、身をかわすレトイン。


(すさまじい力だ…

多少の反撃はしかたあるまい…)


レトインは何を考えたか、リミテッドの力で武器を作り出した。


「パルチザン!!」


雷で作られた、いかずちの槍。

レトインは善めがけて、槍を突き出した。


その槍は善の脇腹をかすめ、その切り傷からポタポタと血がたれた。


「くっ!!

なぜだ…?俺は今“エレクト”の力を発揮してるんじゃないのか!?


俺の体は今、炎と化してるはず…
ぞれなのに、攻撃を受けるとダメージがある…」


「勘違いするな!
確かにおまえの体は今、炎と化している…

しかし、生身の人間の体に変わりはないんだ!


炎でありながら、人間の体でもある…
何とも説明しがたいが、そんな状態だ」


「チッ…なんだそれ…

じゃあ無敵ってわけじゃねぇんだな…」


「当たり前だ!

逆に無敵では困る…
ジンも同じ能力を持っているんだからな!」


「確かに…」


力を出し続けるとともに

善にどんどん疲れが見えてくる。


「くそっ…全然体がもたねぇ…」


「まだ体が慣れてはいないんだ!

何度も使い続ければ、いずれ体も慣れる」


そう話すレトインは、確かに疲れなど見えなかった。

レトインがエレクトの力を、完全に扱えている証拠だ。



レトインは善にふっかけた。


「いいのか…?善」


「………?

何がだ…?」


「こうしてる間にも、大悟達は四天王と戦っている!!」


「!!!」


「早くしないと…早く助け出さないと…


“また”大切な仲間を失うことになるぞ!?」


「!!!」



レトインは、善に最も触れてはならないことに、あえて触れた。


(また失う…?




キング・八光みたいにと言いたいのか…?

ふざけるなレトイン…
おまえと“約束”したのに…


このまえも言ったなっかじゃねぇか…
なのに…そんなセリフ…

簡単に言うんじゃねぇよ…)




『目の前にいるやつが、例えどんなやつでも、どんなに悪いやつであろうとも…

俺はそいつを殺さねぇ』




(キング・八光…

おまえは正直、俺達の敵だった…)



『助けられる命は必ず救う。自分の身に危険が及んでもな。

俺の目の前で、死人なんてもんは絶対出させねぇ!!』



( けど…なくなってもいい命なんて、ひとつもないはずだ…)



『人が死んだら誰かが悲しむ…

そいつのことを大切に思ってるやつらが…』



(八光は死に際に、一言残した…)




すまなかった レトイン




『もっと他に…他に残すことがあっただろう…』



(そんな八光の死を…

おまえは悲しんだ…)



『目の前の人を助けるのは、決して無駄なことなんかじゃない…

だからレトイン…今言ったこと…
それだけは約束してくれないか?』


『………


分かった』




(もう…誰も死なせない…

誰の悲しむ顔も、見たくない…)




『倒せ…ジンを。


ジョーカーを止めるんだ…善』



(俺がやってやる…意地でも俺が…

ジンを…
ジョーカーを倒すんだ!!!)



善の光が、更に強くなった。


「そうだ!!!善!!!

来い…!!
怒りでも、憎しみでも、なんでもいい!!


感情を爆発させろ!!

人の感情に左右する…
それが“リミテッド”だ!!!

(目覚めろ!!善!!

今こそその眠ってる力を叩き起こすんだ!!)」



善の光は一瞬にして、急激に強くなった。

そして、善はレトインにむかって、炎の拳を突き出した。


「!!!

こ…これは……!!」



その繰り出された攻撃は、レトインの体に炸裂し

レトインは転がるように吹き飛ばされた。



「どうだ!!レトイン!!!

これでも…俺がまた仲間を失うってか!?


もう負けねぇ!!
ジンにだって…負けやしねぇんだ!!!」


そう善が叫ぶと…
体に負担がかかりすぎたのか…

少し意識が飛び、善は片膝を着いた。


「おっと…

くそっ…やっぱり…
まだ体がついていかねぇ…」



吹き飛ばされたレトインは…

起き上がることができないほどに、“あること”に驚いていた。



(善…今…おまえ…

自分が何をしたか、分かっているのか…?


今おまえがした攻撃は…
ジンがトウマにした時と同じ…


ほぼ0の状態から、一気に爆発させて力を発揮した!!


全エネルギーを、どこにも分散させず

一点にすべてのパワーを注ぎ込んだ攻撃!!


まだ善が力を完全に使いこなせてなく

100%の力を発揮できていないから
助かったものの…


完全に力を身につけていたら…
俺もトウマ同様…



恐らく今の攻撃で、死んでいた…)



レトインは善を睨みつけるようにして、静かに立ち上がった。


「はぁ…はぁ…
だめかよ…?今のでも…?


確かに、こんぐらいでへばってちゃ

使いもんにならねぇかもしんないけどよ…」


少し黙り、レトインが言った。


「いや…


合格だ。

(出来すぎたほどにな…)」


「!!!

えっ!じゃあ…
大悟達のところへ行っても…」


「もちろんだ」


それを聞いた善は、うれしくなって
飛び上がろうとした。


「よしっ!!じゃあ俺…

ぐっ…」


しかし、善は立ち上がれないほどに

エレクトの反動が大きかった。



その姿を見かねたレトインが言った。


「そんな体でどうするつもりだ…

行っても足手まといになるだけだ…
大悟達の下に行くのは…


俺だ。
おまえはそこで、回復するのを待ってろ」


「!!!

くそっ!
話が違う…!!」


どうしても自分が何とかしたかった善。

納得がいかなかった。
だが…


「今は体を休ませるのが先決。


おまえとの“約束”は…
俺がきっちり果たしてくる」


「!!!

(てめぇ…また、いっぱい食わされた…

覚えてたくせに…
わざと言いやがったな!


ひん曲がった性格は、相変わらずだったな!!)」



その言葉を聞いて、善の熱くなった気持ちは

一気に冷め、おさまった。


善はしばらく自分の体を回復することに専念し

大悟達のことは、レトインに任せることにした。


「だから俺に任せておけ…


行ってくる。
動けるようになったら、おまえも来い!」


レトインが大悟達のところへ向かおうとしたが…


「待ってくれ!!」


善がレトインを呼び止めた。


「………?

なんだ?どうした…?」


「行く前にひとつはっきりさせてぇことがある…」


「………?」


善は下をうつむいて、レトインに言った。


「もちろん、俺はみんなを信じてる…

それに、絶対俺も負けるわけにはいかない…


そんなことは当たり前の話…
けど…万が一のことだってある…」


「!!!

さっきの威勢はどうした!?
おまえらしくもない…」


「いや、違うんだ…

俺のためにも、みんなのためにも
俺はジンを、ジョーカーを倒すと、心から誓ってる…


だけど…
レトインが最初に俺に話した…


“俺がやらなければならない 3つの理由”


この…
最後のひとつの理由を、俺はまだ聞いてねぇ…!!」


「………」


「そりゃここで死ぬわけじゃねぇし、あとでも

すべてにカタがついてからでも聞ける…


だけど…
もう一度、覚悟を決めたいんだ!!


ジンと戦うまえに、その理由を聞いて
決戦に臨みたいんだ!!!」


レトインは、ひたすら黙って聞いていた。


「だから…なぁ!
頼む!レトイン!!

教えてくれ!!最後の理由を!!


俺がやらなきゃならない、本当の理由を!!!」


レトインは善の目を、じっと見た。

その目からは、不安などまるで感じさせなかった。


『やってやる!!』という強い思い

その目に“希望”を感じた。



善は覚悟を決めたかった…

そして、もう一人は、その覚悟に答えるために…


自らも“覚悟”を決めた。




「分かった。話そう。

善がやらなければならない、最後の理由…
3つ目の理由を!!」




第48話 "覚醒" 完
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