3BECAUSE 第47話
「そこまで分かれば、俺の能力を教えてやろう!!


“ファントム・リミテッド”

“幻覚”の力!!!」


「幻覚…?

これが全部幻だというのか…?


(どっからどう見ても、本物にしか見えねぇじゃねぇか…)」



四天王・ゲンジが繰り出す、幻の力。


ゲンジが作り出した映像

それは高速道路のど真ん中に立たされた映像だった。


(くそっ…惑わされてはだめだ…

待てよ…?)


ここで大悟は勘付いた。


(見た目は本物だが、これはあくまでゲンジが作り出した幻…

てことは、実際に車が走ってるわけでも、ここは道路でもないはず!


現にここは俺達がいたアジトだ!
よし、それなら…)


大悟は頭を働かせ、何か閃いたように

勇気を出して、大悟は走りこんで来る車に向かって飛び込んだ。


「大悟!!危ないし!!」


「いや…大丈夫だ!

こいつは本物の車じゃねぇ!!
実体なんかあるはずないんだ!!」


そう決め付けた大悟であったが…

するとどこからか、不気味な声が聞こえた。


「バカめ…」


実体はないと決め込んだ大悟であったが…

車が大悟と重なると…


大悟はまるで本物の車に跳ねられたように

大悟の巨体は吹き飛ばされた。


「ぐわっ!!!


な…なぜだ…?
こいつは幻じゃ…?」


「俺の力をあなどるな!!

いかにこいつが幻であろうと…
リアルすぎる作りに、視覚、脳が反応し


幻であるのに関わらず、想像だけで痛みを伴ってしまう。

これをされれば、これをくらえば痛いと
勝手に脳が判断してしまうんだよ!!」


「なにそれ…
脳が“錯覚”を受けているというの…?

思い込みだけでダメージを受けてしまうなんて…」


それを聞いた大悟だが、それに対して大悟が反発した。


「でもおかしいぜ…?

脳が錯覚を起こすのは分かったが、さっきの走ってきた車に
実体があるのはおかしい話だ!


明らかに俺は、何かがぶつかった衝撃があった!

それに、本当のあの車の速度でぶつかれば
俺は即死なはずだ…」


「!!!
頭いいなおまえ…

それは簡単だ。


これは“リミテッド”だからだ」


ゲンジの発した言葉に、首をかしげた。


「おまえ達が剣を作り出せば、本当に切れ味が生まれるのと同様…

俺も力を生み出せば、もちろんそいつには実体は現れるってわけだ!!


そりゃ実際にあの速度で走る車を
生み出してるわけではないから、威力は同等にはならんがな!!」


思ったよりも、想像したよりも
ゲンジの能力は厄介であった。


「なんだし!あんたら!

音だとか、影だとか…
今度は幻って、単なる惑わし集団じゃん!!」


「けっ…何とでも言え!!

俺はおまえらの攻撃など、いっさい受けずに倒してやるよ!!」


相当厄介な能力だが、なによりも厄介だったのは…


「さっきからゲンジの姿が見えねぇな…」


ゲンジの姿が幻の中に紛れ、一度も見えていないことだった。


声はするものの
どこから声がするのかは、全く限定できないでいる。


「志保…
幻が通じないとすれば、おまえが頼りだ…

おまえでも見えないのか?ゲンジの姿…」


「ごめん…
私は、聴力には強いみたいなんだけど…

目の方は全然ね…
全くもって見えてこないわ…」


「そうか…」


頼みの志保も、困惑した状態にあった。

一切、幻を見破る方法は、まだ見えて来ない…





3BECAUSE

第47話
 「正義と悪」





一方、善の修行を続ける
善とレトイン達…



「どうした!?善!!

集中しろ!!」


「ふざけんな!
集中なんてできるわけねぇだろ…?

もう俺にも分かるんだよ!


少し離れたとこで…俺達のアジトんとこで
大悟達が四天王と戦ってる!!

今すぐ俺もそこに行かせろ!!!」


少し前までは、力を感じることすらできなかったはずの善…

もう善にも分かってしまう。
リミテッド同士が力を放っているのが…


「だめだ…おまえを行かすわけにはいかない…

そのために、わざわざ2手に別れたんだ」


「何…?」


「おまえはここで、“エレクト”の力を完全に身につける!

それができたらだ…
それが可能になれば、行ってもいい」


「!!!

言ったな!?
よし!だったら早く教えろ!!

今すぐにでも身につけてやる!!!」


「だから…!!

それをさっきからやっているんだろうが!!」


俄然やる気を見せた善だったが

善が急に静かになり、落ち着いた声で、レトインに聞いた。


「いや…そのまえに…


“エレクト”

こいつは一体何なんだ…?
そっから教えてくれないか…?」


「………


そうだったな…
その説明がまだだった…



“エレクト”

この力は、まさに神に選ばれたと言っても
過言ではないかもしれん…」


「………?」


「普通のリミテッドの力とは…

自分の体から発するもの…そうだろう?」


「あぁ…」


「しかし、エレクトの力を発揮すると…

“自分の体自体が”リミテッドの力と化す!!


放つ、発するんではない…
もう自分のすべてがリミテッドの力なんだ!!」


「!!!

なんだそれ!!!
じゃあ俺が力を発揮したとき…

体中が力に溢れ、無限のように力が出てきた気がしたんだけど…」


「それもそのはずだ。

おまえの体自体が、リミテッドの力そのものだったんだからな!」


ずっとレトインが言っていた

エレクトの力を持つものと、持たないものでは
まるで話にならない…


その意味が分かった気がした。


そんなもの…
力を持たない者が、持つ者の…

相手になるはずがない!!!


「だから俺達は選ばれてしまったんだよ…

不運にもな…」


「不運…?」


「そうだろう…?

そのうちの一人に、ジンがいるんだからな。
ジンを止められるのは俺たちしかいないんだ!!」




もし、この世に神がいるとするならば…

なぜ神は、こんなにも世の中を平等にはしてはくれないのだろう…?


正義を生み出すのも神ならば、悪を生み出したのも神だ。


そもそも…
悪がなければ、正義など存在しやしない…

正義と悪…
その境界線を決めたのは、人間であり、神ではないのかもしれない…


正直、自分が今何を言いたいのか分からない…

俺は生み出した神を恨み、生まれてきた自分を憎んだ。



けど、ひとつ…
たったひとつ、今決めたことがある…

それは…




「俺がジンを倒す…

いや、俺しかいないのか…?


まぁ…
その方が分かりやすくていいや…」


(もう…誰も死なせやしないんだ…

志保、大悟、エーコ…
レトインも!!


俺がやってやる…
俺が“エレクト”の力で全部!全員守ってやる!!!)



善の体が突然、光に包まれた。


「!!!
善!!それだ!!

“エレクト”の力!!


今度こそ、掴むんだ善!!」





第47話 "正義と悪" 完
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