3BECAUSE 第49話
「“俺がやらなければならない 3つの理由”

レトイン!!
教えてくれ!!最後の理由を!!


俺がやらなきゃならない、本当の理由を!!!」


「話そう。

善がやらなければならない、最後の理由…
3つ目の理由を!!」





3BECAUSE

第49話
 「Final Because」





善とレトインが初めて出会ったとき

レトインが善に言ったこと。



“おまえには やらなければならない理由が3つある”



善にはジョーカーを倒さなくてはならない理由が
3つあると言っていた。


「最後の理由…

これがおまえにとっては、本当にやらなきゃならない
最大の理由かもしれないな…


いいか?落ち着いて聞けよ…?」


「落ち着いて…?

分かった」


レトインは一呼吸おいて、一度冷静になり

そうしてから、ゆっくりと話し出した。


「善…おまえがリミテッドとなった日…

おまえが死んだとき…


おまえの家が火事になり、善は死んでリミテッドとなった…

そうだったよな…?」


「あぁ…

その火事で俺は死んだが、親父の魂が乗り移り
代わりに親父が死んでしまった…

んだったな…」


「その火事ときのこと…

覚えているか…?」


「いいや…それが全然…

ほとんど覚えちゃいなんだ、これが…」



それもそのはずである。

本当は死を迎えるはずの人間。


そんな人間に、その時の記憶など残っているはずがない。


「無理もないか…

だったら、こう言えば少しは思い出すか?


あの“火事”はなぜ起きてしまったのか…?」


「えっ…?原因…?


(だめだ…よく思い出せねぇ…)」


「思い出せないのなら、思い出せてやろう。

あの火事は、ある事件により引き起こされてしまった。


あの頃、世間を騒がせていた
連続放火魔事件



その事件、その犯人、その火事を引き起こしたのは…



現・ジョーカーのリーダー

二階堂 仁だ!!」



「!!!


(連続放火魔事件…?

そういえば、そんなのがあったような…)」



善にはどうしても思い出せないことがあった。


そもそも、なぜあの日、善が死んだのか。

なぜ家が火事になってしまったのか。


単なる不注意により、起きてしまった火事なのか…?
それとも…


しかし、その事件の真相を、レトインが今告げた。



「俺が、いや、親父が死んじまった火事…

そいつが放火…?
そして…


その犯人が、ジンだっていうのか…?」


「そうだ。


善がジョーカーを倒す以前に、まず善が

“リミテッド”となる原因を作ったのがジンなんだ!!


あいつも善と同じ…


“ファイヤー・リミテッド”

“火”の力を持っている。
その力を使って、火事を起こしたんだ!!」


「!!!

う、うそだろ…?」



善は信じられなかった。
いや、信じたくなかった。


今まで善はジンを恨み続けてきた。

無関係な人間を巻き込み、無差別にあくどい事件を起こし…


友であったはずのレイ、八光を殺害し
レトインを苦しめた。


今もまだ、以前の志保や大悟のように

リミテッドの力で制圧され、ジョーカーに拘束されている人物がいるはず…


そんな“悪”のジンを、善は許せなかった。

しかし…


それは善の“周り”に影響していた出来事であって

その結果、善自体を苦しめていたのだが…



自分の父親が亡くなった原因

それまでもか、自分がこの戦いに参加することとなってしまった原因


その原因を作った人物が、ジンだったとは
思ってもいなかった。

善はレトインから、とんでもない真実を突きつけられてしまった。



「火事となったあの日…

俺はその日も、ジンを見張っていた」


「えっ…?」


まだすべてを受け入れられず、呆然としている善のまえで

レトインがその時起きた、出来事を話し始めた。


「なんとしても、ジンの悪事を止めようと
連日連夜、俺はジンを見張っていたんだ。


しかし、その日も阻止できず
“その事件”は起きてしまった…」




その時だ

その真っ赤に燃える炎の中から
これまでにない見たことのないほどの強い光を放ったのは…


恐らく、その光は善がリミテッドなった時に起こった光

そして、その強すぎる光は


“エレクト”が生み出されたために起きた光だったのだろう…



『はぁ…はぁ…
くそっ!!また止められなかった!!


な、なんだ!!この強い光は!!』


『はっはっはっは!!!』


燃えさかる炎の中から、笑い声が聞こえる。

その炎の中から、“ヤツ”は出てきた。


『よう!
また俺を阻止できなかったってか!?』


『ジン!!!』


『もう手遅れだ。
とうとう生まれちまったよ…

ただのリミテッドじゃない…


神に選ばれたリミテッドがな!!
はっはっはっは!!』


『なんだと!!?
くそっ…!!

(もう遅いよな…)』




「手遅れだと思いながらも、俺はすぐに消防、救急に連絡を入れた…

火は間もなく消えたが…
強く放たれた光が意味するのは…


もう遅かった…
すまない…俺がジンを止めることさえできれていれば…

善をこんな目にあわすこともなかったんだ…
本当にすまなかった!!」


レトインが深々と頭を下げた。
レトインが謝る姿を見るのは、もう何度目になるだろう…

もう善には分かっている。


悪いのはレトインじゃない。
レトインに責任などない。


それよりも気になったのは…


(レトインは俺がリミテッドと教えてくれたとき
こう言ってた…


『おまえはあの大火事の中、無事に帰ってきた…

しかも“無傷”で焼け跡すら残っていない…変だと思わないか?』


まるで火事が起きた出来事を見ていたかのように…

そうか…見ていたかのようにではなく、実際に見ていたんだ!!


そして、助けようとしてくれてんだな…)


それともうひとつ…



「レトイン…謝ることなんてどうでもいい…

それよりも…
なんでもっと早く教えてくれなかった!?


親父を殺したのはジン…!!
そう分かってれば、断ることも、俺がやる理由もはっきりした!!

そしたら俺はジンを倒そうと…」


「そうなると思ったからだ」


「!!??」


「言えば熱くなり、ムキになり
おまえはきっと無謀と分かりながら、ジンに挑みに行く!!」


「!!!」


「そして、あっけなく終わっていただろう…


恐らくジンが、火事を起こし続けていた理由は
リミテッドを生み出すためだったんだろう。


しかも、より強力な、おまえのような“エレクト”を」


「それが…ジンが放火を続けてた理由…?

親父を殺した理由か…?」


「そうだ。そして、その奇跡は起きてしまった…

だが、ひとつジンの計算が崩れる出来事がある…」


「………?」


「自らが生み出した、エレクトの男に

ジンが敗北すること!!
ジンの中にある、絶対の自信を崩すんだ。


その時が、ようやく来たんだ善!!
だから俺は話した…

今、最後の理由をな…」


「あぁ…

倒す。親父の仇をとるためにも…
俺が絶対な!!!」





バタン。


そう言うと、善は後ろ向きに倒れ
地面に寝転がり、空を見上げた。


「善……?」


「俺…エレクトの反動で疲れてんのかな…?

しばらく動けそうにねぇや…」


「………

そこで休んでろ。
大悟達のことは、俺に任せとけばいいんだ!


(ショックだろうな…辛いだろう…
すまない善…

でも俺は知ってるぞ…?


おまえの“強さ”を…
四天王なら俺に任せとけ!!

しかし、相手がジンとなればおまえの力が必ず必要となる…


そのときまでに、気持ちの整理をしててくれ!!)」



レトインは、善の気持ちを察して
静かに善から離れ、大悟達のもとへと向かった。



一人になった善は、真っ暗な夜の空を
じっと見ていた。


(親父……


なぁ…なんなんだろ…俺って…?

親父が俺に、あんたの命をくれた…


そこにはどんな意味が、理由があるんだろうな…

素直にそこで俺がジンの起こした火事で死んでれば…


こんな辛い出来事も、思いもしなくて済んだんだ…
親父も今頃、まだ人生続けられたんだぜ…?


教えてくれ…親父…

俺が生きる理由ってなんだろう…?
“リミテッド”って一体なんなんだろう…?)





第49話 "Final Because" 完
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