3BECAUSE 第44話
「俺はその日から、その時から自分を捨てた。

俺が生きる理由はただひとつ…


ジンを倒すため、レイの仇をうつため…
そのためだけに生きる、新たな人生の始まりだ」


善達は初めて、レトインの覚悟を知った。


「すべて…俺の責任なんだ…
許してくれ…みんな…

今のジョーカーが存在するのは、全部俺のせいなんだ…」


レトインは頭を深々と下げ、謝った。

そんなレトインの姿勢に対し、志保は納得がいかなかった。


「なんで謝るのよ…

話を聞いてると、全然レトインは悪くなんかないよ…


あなたが謝ることなんてない。

すべて悪いのはジンじゃない!!」


志保がそう言うと、大悟も続いて言った。


「志保の言うとおりだ。

レトインがジョーカーを創ったというから、敵視してしまったが…


真相を聞いてみれば、レトインのせいなんかじゃない!

レトインが責任を感じることはないさ!」


レトインは2人の言葉に対し、大きく首を振った。


「いや…俺が許されるわけがない…

俺がネットで呼びかけ、力をジンに教えた…


俺が生み出してしまったんだよ…
あの悪魔のような男を…ジンを!!!

そしてジンはレイを殺した!!


レイまでもか、今度はトウマまでもだ!!!」


レトインは、もう動くことはない
横たわったヤコウ トウマを見つめた。


「トウマも…
そのままじっとしていればよかったんだ…

何事もなかったかのように、隠れ続けていればよかったものを…」


「………?」


「レイが殺され、ジンを共に倒そうと誘った時…

トウマは俺に全てを押し付け、自らは逃げた…


きっと、その時の責任を後に感じたんだろう。

だからトウマは“キング”を創り上げた。


ジョーカー…ジンを倒すためにな…

“こうなること”は最初から見えていた…


だから俺はなるべくキングには触れず

ジョーカーから遠ざけるようにしていたというのに…


なのにトウマは…
くそっ…!!くそーーっ!!!」


「レトイン…」



どんな言葉をかけようと、“真実”は変わることはない。


レトインがジョーカーを創ったことは事実。

ジンに、リミテッドの力を教えたことも事実。


レイ…トウマの死…

いくら後悔しようとも、その真実は変わることなどない。


どれだけ謝っても、どれだけ償っても

許されることなどない。



そんな時、人は
果たしてどうすればいいものなのだろうか…?



志保や大悟がいくら声をかけても

レトインは悔やんでいた。

自分を、自分の行ってきたことを許せなかった。


そんなレトインに、善が一言いった。



「くだらねぇよ」





3BECAUSE

第44話
 「ライジングサン・善
VS
元ライジングサン・レトイン」





「!!!!

なんだと…?
もう一回言ってみろ」


「くだらねぇって言ったんだ」


「どこが…

一体これのどこがくだらないって言うんだ!!!」


レトインが吼えた瞬間。

とてつもなく大きな光、それと同時に
強大なる力が一気に現れた。


大悟が即座に気づいた。


「こ、これは…

“エレクト”の力!!!」


こんな表情のレトイン…
見たことなどない…

しかし、善は臆することなく
話を続けた。


「おまえがな…
いくら悩もうが、悔やもうが…

もうレイもいなけりゃ、ヤコウもいやしねぇんだよ!!!」


「ちょっと善!!

そんな言い方あんまりよ!!
謝りなさい!今すぐレトインに!!」


「なんで俺が!?
はっ!俺はレトインとは違う!

俺は昔っからな
謝ることが大っ嫌いなんだよ!!!」


「だったら聞かせろ…

今の話の、一体どこがくだらないんだ!!


俺がどんな気持ちで…
どんな覚悟を持って今まで生きてきたと思ってる!!」


「それは認めてやるよ!
並大抵の覚悟なんかじゃねぇ!!

俺にはとてもじゃないが真似できねぇ!!


けど…いつまで縛られてやがる…

いつまでそこに立ち止まってるつもりだ!!」


善の言い放った言葉も…

今のレトインには通じない。伝わりやしない。


「意味が分からん…
俺はちゃんと前に進んでる…

レイの死も乗り越えた…
すべてを受け入れた!!


だから今の俺がいる…
“レトイン”がいる!!

トウマの死だって…
必ず乗り越えて見せる!!

悲しんでる暇などないんだ!!!」


「それだって言ってんだよ!!
バカ野郎!!!」


レトインまでもか、善の体まで突然光り…

善は本気で、全力で右手を前に突き出した。


善の右手は真っ赤に燃え
その握られていた拳はレトインの顔面に当たった。


そしてレトインの体は吹き飛んだ。


「き…貴様…!!

やるつもりならやるぞ善!!!」


「何してるのよ!!
なんでここで2人がもめてるのよ!!

大悟、2人を止めてよ!」


「いや…
やらせていろ」


「えっ!?」


「善が何かをつかみかけている…

“エレクト”としての何かを…」


「今はそれどころじゃないでしょ!!!

いいから止めようよ!!」


強烈な一撃をもらったレトインは
完全に我を忘れ、すかさず善に反撃した。


「本当のエレクトの力の使い方がまだまだだ…

エレクトとは…
こうやって使うんだよ!!


“サンダーボルト”!!!」


レトインの光と共に纏っていた

雷の力が、一気に放たれ、善へと向かって飛んでいった。

その攻撃は、目にも見えぬような速さで
善の体に命中した。


「ぐわぁぁっ!!!」


「善!!!」


攻撃を受けた善は、後ろから倒れた。


「はぁ…はぁ…

何も知らないガキが…
ふざけたことぬかしやがって…!!」


倒れこんだ善は、空を見上げながらつぶやいた。


「なんだよ…
できるんじゃねぇかよ…」


「何……?」


善は立ち上がり、レトインに言った。


「今のが“本当のおまえ”だろ?

できるんじゃねぇか…なれるんじゃねぇか…
何無理して、別の人格偽ってやがる!!」


「!!!」


「何もおまえは特別な人間なんかじゃねぇ。
普通の人間だ。

“リミテッド”だって
普通の人間だ。


ちょっとした宴会芸ができるぐらいなもんだろ?」


「ふざけるな…
何が宴会芸だ…この力で…

いくらでも人は殺せる!!

そんな容易く言えるような力なんかではない!!


その力のせいで、俺は大切なものを…人を失ってしまった!!

確かにレイもトウマも、戻ることなどはない…

けどな…
俺がそいつらのために、そいつらの仇をとるために
生きなければならないんだ!!


そのためには、強くならなきゃいけない!!

どんな時も、何があろうと冷静で、ジンを倒すこと…


それだけに全てをかけて生きるしかないんだ!!!」


レトインの心の中にある強き思い。信念。

しかし、それは…



「間違ってる。


死んでいった者の分まで生きる…
確かにそれが俺達リミテッドだ。

だけどよ…


それじゃおまえは死んでんだよ!
生きてなんかいねぇんだよ!

別人になりきって、必死に強くなろうと強がって…


そんなもん、生きてるなんて俺は呼ばせねぇ!!

本当のおまえを…自分を出せ!!!」


「そんなこと…できるわけがない…!!

大切な人を失った俺に、昔の頃の自分など…


もう戻るとができないなら…
変えることができないのなら…

どうすれば…俺はどうすればいいんだ!!!」



「今を生きろ!レトイン!!


何も偽る必要なんかない…

何も強がる必要なんてない…


泣きたいなら…

思いっきり、泣けばいい」


「!!!」


「死んだ者の命、俺ら背負ってんだろ?
見てるぜ。レイ。

きっと偽者のレトイン見ててレイ…


何一つ笑っていやしないと思うぜ…?」



「!!!


(そんなこと…今まで考えたことなかった…

俺はジンを倒すために…
おまえの仇をとることだけを考えて生きてきた…


いいのか…レイ…?
俺も普通に生きて…

おまえは死んでるのに
俺なんかが生きてていいのかと思ってしまっていた…


俺もいいのかな…?
普通に泣いたり…笑ったりしても…

いいのかな…レイ……)」


レトインは、がぐりと膝から落ちて
地面にひれ伏せた。

そして…



「うわぁぁぁぁっっっ!!!!」



泣いた。


“レトイン”として生きてから初めて

本当の自分を…本来のあるべき自分を…



何偽ることなく、さらけ出した。





第44話
"ライジングサン・善
VS
元ライジングサン・レトイン"
第43話へ
STORYトップに戻る
第45話へ