3BECAUSE 第43話
「仲良くやっていた…そう思っていたのは、俺ら…

いや、俺だけだったのかもしれない…


これがすべての始まりだったんだ…
レイの死…

ここからすべては始まり
俺、ジン、トウマ…

すべてはバラバラになっていったんだ!!」





3BECAUSE

第43話
 「ジンとレトイン」





「俺達は会うたびに、少しずつリミテッドの力を操ることが上手くなっていた。

それからだ…
俺がある異変に気づき出したのは…」


「異変…?」


「あぁ…
力を見につけていくうちに、どんどん変わっていくやつがいる…

その男が二階堂 仁だった」


「ジン……」


「俺達は仲のいい友であり、同志…

俺はそう思っていたが…


ジンにとっては、そんなもの
どうでもよかったことなのかもしれない…

この“力”を手にするために
仲のいいフリをしていただけだったんだ…」


ジンをよく知る、大悟が言った。


「そうだな…

昔のジンがどんなだったか知らないが
ジンの間に友情なんてもの…

とてもじゃないが、想像もできない」


「確かにな…

きっと力を見につけて“変わった”わけではなく…


力を手にして、本性を現したというべきなのであろう…」


レトインの推測に、志保も納得してしまう。


「うん…

そうよ…それがジン。ジンの本当の姿」


「あぁ…

ジンはどんどん力をつけて強くなり
俺達の手にもおえなくなってきてしまう…

この時から、薄々気がついてはいたんだ…

ジンは俺らのこと、なんとも思ってはいないとな…


けど、俺はそれを認めたくなかった…
初めてできた仲間…

信じたかった。俺らは最後までジンを…」


「レトイン…」


今のレトインからは想像のつかないような言葉。

善はジンのことだけでなく
今とは違う昔のレトインにも驚かされた。


「そして、ついに“事件”は起きてしまった…

恐らく、力を身につけ、俺らは用済みとなったのだろう…


ジンはレイを一人呼び出し…


ジンはレイを殺した」


「!!!

なっ、なんで!?
なんでそうなっちまうんだよ!?」


「さぁな…
詳しい理由は未だに分からん…

だが、なんとなくではあるが、ヤツの考えていることが分かる…」


「………

なんだ…?」


「力を手にしたジンは、きっと力を試したくなったんだろう。

ジンは俺と戦うために…
俺を怒らせるためにレイを殺した」


「そ、そんな理由で…!!

そんな理由で人を…仲間を殺していいの!?」


「それがジンだ!!!

そんなことを平気で仕出かしてしまう男…
それがジンなんだ…」


ジンがレイを殺害した理由。
本当の理由は、未だ謎のまま。

しかし…


「今、ジンは俺達ライジングサンと
命の賭け合いを楽しんでいるんだったよな…?

どっちが強いか、単に遊んでるだけだって…


そんな子供みたいな考えをするジン。

殺した理由がそんな理由でも…
十分ありえる話だな」


「そうだ…
そんな悪魔のような男なんだ…ヤツは…


俺はレイを殺したジンを、許せなかった。
ジンの狙いは恐らく俺…

なぜなら…俺とジンは…


“リミテッド・エレクト”


だったからだ」


「エレクト!!」


善は自分の右手にある、マークをじっと見つめた。


「リミテッドの中の、更なる奇跡の力…

その力を持った俺とジン…


ジンは俺と力の比べ合いをしたかったのだろう…

俺を怒らせ、俺を本気にさせるために…」


「じゃ、じゃあ…

もしかして戦ったのか…?
ジンとレトインは…?」


レトインは少し下を向いた。

一呼吸おいて、レトインは話を続けた。


「あぁ。俺はジンを許せなかったんだ。

俺はジンを殺す気持ちで望んだ…


だが、正直俺にも分かっていた…

その時のジンの“強さ”が!!

ジンは誰よりも俺から技術を吸収し
そして俺を…


簡単に追い抜いていった!!

ジンが持つリミテッドの才能は…
もしかしたら、善と…

いや、善以上だったかもしれない!!」


「!!!」


あれほど善のリミテッドの素質を認めていたレトイン。

だが、ジンはその善を上回るほどの逸材だった。


「だから俺は、このままでは負けると思い…

トウマを誘った。
レイの仇を、いっしょにとろう!!と。

しかし、トウマは…」




『ジンをあんな姿にさせてしまったのは、全部おまえの責任だ。

俺には関係ない。
元々ジョカーを創って集めたのもおまえ。


レイを殺したのも、おまえのようなもの。

俺はこの先、おまえを恨み続けるぞ!!』



「ひ、ひどい!!

八光はなんてことを言うの!?

自分に非がないように、全部レトインに責任押し付けて…」


志保がヤコウ トウマの発言に

怒りをむきだしにしていたが…


「いや、いいんだ志保」


「えっ…?」


「それは言われた時は相当ショックを受けたさ…

けど、トウマの力は分かっていた。


エレクトでないトウマがジンに挑むのは無謀な話。

先は見えていた…
だからトウマは逃げたんだろう。自分の死を察してな」


「そんなの…

全然よくないじゃない!どこがいいのよ!!」


どこまでも冷静なレトインが、志保に優しく言った。


「いいんだ。
それでトウマが生き残れるなら、俺はそれでいいと思った。

ジンと戦っても死を迎えるだけ…


それならば、俺がどんな罪をかぶろうとも

トウマが生きていてくれてれば、それでいいとな」


「レトイン…」


「だから俺は、ジンに一人で挑んだ。
持っている力、すべてを出し切ってな!

けれども結果は…


自分でも分かっていたように、俺の負けだった…」


「!!!

ジン…それほどまでに強いのか…」


「しかも情けないことに、俺はジンを殺す気で挑んだにも関わらず…

ジンは俺を生かした…


そして、俺は生死を彷徨いながらも、俺はジンから逃げたんだ…


結局俺も逃げた…
はっ…俺も所詮トウマと同じさ!」


「………」


誰も何も声をかけられない。

レトインにかける言葉が見つからなかった。



「それからだ…
ジンが新たなジョーカーのトップとなり、悪行を働き始めたのは…」


「それが今現在あるジョーカーの姿か!!」


「そうだ…

その後、俺はジンから命を狙われるようになった。


俺を生かすも殺すもジンの気分次第なのだろう…
ジンからの逃亡生活が始まった。


手始めに、俺の家族や友人…

俺に関わりのある人物が狙われていく…


大切な人を失うことを恐れた俺は、ただひたすらに逃げた…


ジンの目に付かないところへと、必死に逃げた。

しかし、それだけではきっと無駄…
ジンの手から逃れることはできない…


そう思った俺は考えた。

一度俺はこの世から消えた方がいいと」


一度この世から消える

メンバーはレトインの言っている言葉の意味が、理解できなった。


「この世から消える…?

どういう意味だ?」


「俺は世間的に死んでることにした方がいいってことだ。

俺が生きていれば、周りに危険が及ぶ…


だから俺は一度死んだことにする。
俺という存在は、この世から消えるんだ」


「なるほど…
死んだとなれば、もう追う必要もなくなるな…

一度死ぬって意味は、そういう意味か」


「あぁ。

俺はそうすることによって
ジンの魔の手から俺は逃れることができた。


数年間息を潜め
時期が来るのを待つ…

ジンが俺の存在を、完全に忘れ去るまでな…


そう計画を立てた時からだ…
その日から、その時から俺は自分の名前を捨てた。

いや…
自分そのものを捨てたというべきか。


今までとは全く別の人格…


その日から俺は自分のことを


“レトイン”


と名乗り始めた。
俺が生きる理由はただひとつ…

ジンを倒すため、レイの仇をうつため…


そのためだけに生きる、新たな人生の始まりだ。


まぁ俺はリミテッドだ。

一度死んでるわけだしな…2度目の死ってやつだがな!」


善はレトインの覚悟を初めて知った。

己のプライドも、自分自身も何もかも捨て
仲間のためにジンに挑んでいる。


普段クールで冷たいレトインの心の中に

まさかそんな熱き想いがあることなど、知るよしもなかった。


そして、善が気づかされたことがもう一つ…



(レトイン…おまえ…

俺がリミテッドだと分かり
ジョーカーに命を狙われる恐怖に怯えていた時…


おまえは俺にこう言ってたよな…?



“今すぐここから、この場所から離れよう。


ここには…失いたくないやつらがいるんだろ…?”



俺はこん時、おまえにはとてもじゃねぇがかなわねぇって思った…

人の心の中の気持ち、読めんじゃねぇのかってな…


けど…そうじゃなかったんだな…


おまえも…おまえみたいな心の強いやつでも…

ジンに怯え、大切なものを奪われることが怖かった…


俺と同じような想いをしてたんだな…)



善にはレトインの、その時の気持ちが

手に取るように、痛いように分かった。


善はレトインのことを、今まで勘違いをしていた。


レトインの覚悟は並大抵のものではなく

とても真似できることではなかったが…


レトインは俺らとは違い、特別な人間


常に冷静で、どんな時も強く

弱さなど一切見せない人間…


そう思っていた。


でも本当は違った。
レトインも…俺と同じ…



普通の人間だったんだ。





第43話 "ジンとレトイン" 完
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