3BECAUSE 第42話
9年前。
八光 灯馬はある不思議な力を身につける。

その力は、のちに“リミテッド”と呼ばれるものであった。



『なんなんだこの力…

あきらかにおかしい…どうしちまったんだ俺は…』


自分という存在に、疑問を持ち始めたヤコウ。


少しでも何かこの力について、情報が欲しいと

本やパソコンを使い、調べる日々が続いた。



そんなある日…


『チッ…今日も何も手がかりなしか…

それもそうだよな…
こんな漫画やゲームの世界のような話、現実にあるわけがない…

俺はどうかしちまってる…』


いくら調べても、一向に手がかりはつかめない。

ネットで調べても、どれも冗談交じりのような

漫画やゲームの、非現実的な世界の話しか出てこない。


ヤコウがあきらめかけた、その時…

ある一つのサイトにたどり着いた。


『ん?なんだこのサイト…

サイト名は…“ジョーカー”…?』





ようこそ、ジョーカーへ


ジョーカーはいつも仲間はずれ

周りとは違う

同じカードであるはずなのに

周りとは違う扱い、特別な存在である


ジョーカーにペアはいない

いつも厄介者の一人ぼっちだ

でも、忘れないで欲しい

ジョーカーにもペアはいる

ジョーカーのペアはジョーカーだけだ

俺達は仲間だ。独りではない。

この言葉の意味が分かるやつが、必ずどこかにいると

俺は信じている…





『な、なんだこのサイト…

ジョーカー?なんだか気持ち悪いな…』


危険な香りのするサイトに訪れてしまったヤコウは

即座にこのサイトから抜けようとした。


しかし、ヤコウはサイト内のあるものを見つけた。


『ん?これはこいつの日記か…?

世の中頭おかしいやつもいるもんだ…
ちょっとこいつがどんな日記書いてんのか、見てみるか!』


興味本位で日記をのぞいてみたヤコウ。

だが、その日記を見たヤコウに衝撃が走った。


『こ、この日記の内容…



まるで俺と同じじゃないか!!!』


その日記に書かれていたこと…


それは自分の奇跡といえる生命力。

それとほぼ同時に起こった、父親の不可解な死。

そして…



自分に宿る、人間離れした“不思議な力”



ヤコウは思った。


『このサイトは…本物だ!!』


そのサイトの日記を隅々まで読んでみる。

そして、日記の最後には、こう書かれていた。





もし俺と同じ仲間、同志がいるのなら

○月×日 深夜0時
△△前にて、俺は待つ

力を見せ合って、確かめよう

俺達は決して一人じゃない





『○月×日って…来週じゃないか!

どうするべきか…』



サイトの内容、かもし出す雰囲気

ヤコウは恐怖を覚え、このサイトの張本人に会うことなど

とてもじゃないが、怖かった。


しかし、ヤコウは、この力について知りたく
何より…


誰一人この力の存在のことを話せず

独りだった…孤独だった。



『いや!行こう!!
間違いなくこいつは俺と同じ力を持ってる!

俺とこいつは…同じ仲間だ!!』





3BECAUSE

第42話
 「ジョーカー創世記」





「俺はネットで呼びかけた。

俺のように不思議な力を持つやつがいたら、集まろうと。


もちろん中には冗談半分で嘘ついてるやつ

自分に力があると思い込んでいるやつ…


そんなやつらは何人もいた。
しかし…

その中に、本当に“リミテッド”であるやつがいたんだ!!


そこに現れたのが…

“二階堂 仁” “八光 灯馬”

そして…



“レイ”」



知らない名前の人物が、善達の耳に飛び込んできた。


「レイ?聞いたことない名前ね…」


「あぁ、ジンでもトウマでもない。

もう一人の女の“リミテッド”だ」


(女…?もしかして…)


話の続きを、レトインは語りだす。


「俺達は力を見せ合った。

だが、他の3人はまだうまく力を使えず…
一番うまく力を使いこなせているのは俺だった。

力を操るコツはこいつらから得ることはできなかったが…

3人の話を聞いてあることが分かった」


善が首を傾げる。


「あること…?」


「それは…


死をむかえているはずの自分が生きていること…

それに伴って、自分の大切な人が死んでいること…


そして、それ以降に“不思議な力”が身についたこと!」


いくら鈍い善でも分かる。


「その条件って…」


「そうだ。
そこで俺達は、その力に名前をつけた…


“リミテッドと!!


その条件こそが、リミテッドの条件だったんだ」


今まで隠され続けてきた、リミテッドの歴史。

ようやくレトインの口から、すべてが話されいく。


「俺達4人は、自然と仲良くなっていった。

同じような境遇を味わった者達だ。
仲良くなるのに、時間はかからなかった」


レトイン、ジン、ヤコウ…
この3人が以前は仲良くやっていた

“友”だった。


今ではとても信じられない話だ。


「俺達は頻繁に会うようになり

“リミテッド”について研究し、力を扱うことの練習をした。


この力は確かに恐ろしい力…
簡単に人を殺めることもできるだろう…

しかし、この力も使い方次第で、世の役に立つこともいくらでもあるはず。


俺達は協力すれば、何だってできる!

俺はそう思っていた…


それが、そう思ったもの同士が集まったものが



“ジョーカー”だったんだ」


「!!!

(ジョーカー…
てことは、本当にジョーカーを創ったのは、レトインだったってわけか!

しかし、今のジョカーとは思想も何もまるで違う…)」


ジョーカーやリミテッドが誕生した日を語るレトインだが

いっこうに“レイ”は謎のままである。


なかなか話しに出てこないレイに、志保が聞いた。


「ねぇ…その“レイ”って人…

どんな人だったの?
さっきから全然出てこなくて…」


「あぁ…レイはとても明るいやつでな。

ジョーカーにおける、ムードメーカーみたいな存在だった。
4人の中に女が一人ってのもあったからか…

恐らくみんなレイが好きだった」


「えっ…?

レトインも!!??」


「ん…?

まぁな…」


レトインが照れくさそうに、恥ずかしながら答えた。

なんだかこの時初めてレトインの

“人間らしさ”を見た気がする。


そんな照れているレトインに、善が言った。


「なぁレトイン…

もしかしてレイって…
こいつのことか!?」


善はレトインに“あるもの”を投げた。


それは以前善が、四天王・琢磨との戦い後に見つけた

写真が入ったペンダントだった。


「!!

お、おまえが持ってたのか!?」


「あっ!それって…

確か女の人が写ってて…」


レトインはペンダントを開けた。

そこには笑顔の女性の写真が入っている。


「そうだ…この写真に写っているのが…

レイだ。
もう一人の、リミテッドで、ジョーカーの一員だ」


「やっぱりな…

で、その人は今どうしてんの?
その人だけ会ったことがねぇしな」


「レイは…



死んだ。
殺されたんだジンにな」



「!!!

なっ、なんで!?
だっておまえら良かったんじゃねぇのかよ!?」


レトインは少し黙った。
そして、よりレトインの表情は暗くなった。

もしかしたら、この時のことを思い出していたのかもしれない。


少しの沈黙の後、レトインは言った。


「仲良くやっていた…そう思っていたのは、俺ら…

いや、俺だけだったのかもしれない…


これがすべての始まりだったんだ…
レイの死…

ここからすべては始まり
俺、ジン、トウマ…

すべてはバラバラになっていったんだ!!」





第42話 "ジョーカー創世記" 完
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