3BECAUSE 第40話
キング・ヤコウトウマと黒崎嵐は、アジトのまえで

これから先の計画を立てていた。


そこに、ある一人の人物が忍び寄って来ていた。


「ん?あれは…?」



「!!!

お、おまえは……」


キング・ヤコウと黒崎のまえに、突如あの男は現れた。




「ジン…!!!


二階堂 仁!!」




3BECAUSE

第40話
 「キング・八光 灯馬
VS
ジョーカー・二階堂 仁」




二階堂 仁


細身で長身。
黒髪で、髪は目が隠れるくらい長い。

その髪の毛の隙間から、時折覗かせる目は、恐ろしく鋭い目つきをしている。


「久しぶりだな。トウマ」


「なぜ貴様が今こんなところに…?」


「久しぶりに会ったというのに、そんな言いぐさはないじゃないか…

少しは喜べよ」


「喜べだ…?

“あんなこと”をしていて、よくそんなことを言えたな!!


俺は今まで、一秒たりとも貴様を忘れたことがない!!

貴様を倒すために、すべてをかけてきた!!」


ジンとヤコウ。

以前は知り合いだったのであろうか…


しかし、お互いの間には温度差がある。


久しぶりの再会を喜ぶジンに対し

怒りをあらわにするヤコウ


2人の間に、以前何かがあったに違いない。



「俺を倒すねぇ…」


「昔の俺とはもう違うんだ!

見せてやる…鍛えに鍛え上げた、俺の力を!!」


「はっはっは!

まるでその言い方では、以前に俺と戦ったことがあるような言い方だな…


おかしいな…
俺の記憶の中では、おまえと俺が戦った覚えなどない」


「黙れ!!

見れば分かるはずだ!今の俺の、この力が!!


(まさか…今ジンが自ら出向いて来るとは…

せっかくもう少しで、俺の計画通りになるところだったのに…

善とレトインが揃ったその時、ジンに挑むはずだった…


早すぎる…
でかい口叩いたものの、俺と嵐の二人でジンに挑むのは…

正直無理だ…
せめてここは嵐だけでも…)



ジョーカー・ジンVSキング・ヤコウ

あまりに早すぎた頂上決戦。


強敵ジンのまえで、あきらかにヤコウは準備不足…

ジンの強さを知っているヤコウこそが下した判断…


今戦っても、ジンに勝つことは不可能。

勝てる見込みなど、0%に等しい。


それを察したヤコウは、ジンに聞こえない程度の小さな声で、黒崎に言った。


「嵐…いいか…よく聞け…

おまえは今すぐこの場から逃げるんだ」


「!!

なっ、なぜですか!?」


「俺とおまえで力を合わせたからといって、ジンに勝つことは不可能だ…

ここは俺が時間を稼ぐ…
その間に、おまえは一人で逃げるんだ!

さすがに多少の時間稼ぎぐらいなら、俺にだってできる」


ヤコウの案に不服なのか、黒崎は反発した。


「なぜ逃げなければならないんですか!?

私はこんなところで死にませんよ…」


「おまえが自分の力に自信を持っているのは分かっている…

しかし、相手が悪すぎるんだ…


いいからここは俺の言うことをおとなしく聞いてくれ…」


ヤコウは、そう言って黒崎の顔をちらっと見た。
すると黒崎は…


「だから…

なんで私がここで死ぬんだって話ですよ」


にやついていた。
まるでヤコウをあざけ笑うかのように…


「嵐……?」


黒崎嵐の様子がおかしい。
ジョーカー・ジンを目の前にして、余裕の表情を浮かべている。


「はっはっは!

相変わらずバカだな…トウマは」


「何!?」


「俺の性格はおまえならよく知っているだろ?

ジョーカーを潰すために存在するキングだ…?
そんなもの、俺が野放しにするわけがねぇだろ!」


「!!!

ま、まさか…」


ヤコウの背すじに、一気に寒気が走った。

とうとう気づいてしまったのだ。黒崎の笑みの理由に。


「気づきましたか…?トウマさん…
いや…

ヤコウトウマ!
俺がここで死ぬわけないんだよ…

ねぇ、ジンさん」


「はっはっは!
俺が自分のかわいい“部下”を殺すわけがないだろ!?」


「よく言いますよ…ジンさん…

あなたなら、やるでしょそれ?」


「ん!?そうだったか…?」


キング・黒崎嵐

彼はヤコウの下で、よく動いてくれていた。
ヤコウの信頼も厚い。


しかし…
キング・黒崎…

この男はジンがキングに送り込んだスパイ。


今までキングの情報や行動、それらすべてはジンに筒抜けであった。

それは一番身近な存在に、ジョーカーの一員がいたからだ。


(くそっ…黒崎嵐…

信じてたのに…おまえとエーコだけは、信頼していたのに…)


すべてを知ったヤコウ。
付き添った年月が長いだけに、ヤコウのショックもあまりに大きい。


「どうやらおまえはライジングサンにスパイを送ったらしいな…

キングとライジングサンで同盟を組むために…


だが、それ以前に自らにスパイが紛れ込んでるとは思ってもみなかっただろう!
くっくっくっ…バカな男よ!」


「黙れ……」


「あなたと過ごした日々…
なかなか楽しかったですよ…

本気でジンさんを倒そうって言うんだから…
ほんと笑えますよ!!」


「嵐!!!貴様!!!」


「やめてもらえますか?そんな言い方…

もう私は、あなたの部下でも、何者でもないんですから」


「!!!

くっ………」


黒崎がきつい一言を言い放って、ヤコウの横をゆっくりと通り過ぎていく。

そして、ジンの後ろへとついた。


きっとこの行動は、黒崎はもうキングの人間ではなく…

ジョーカーの人間…
そう意味するものだったのだろう。


「なぁトウマ…

なぜ今まで下っ端しか送り込まなかった俺が、ここに来て自ら出向いたんだと思う?」



「知るか…
貴様の考えることなど、理解できん…」


「飽きたんだよもう」


「飽きた…?」


「おまえが余計なことするからだ…

橘善にレトイン…そして俺。


“エレクト”の力を持つ者達…
役者はそろった。舞台は整ったんだ。

そこでおまえみたいな、エレクト“じゃない”脇役ども…」


「………」


「そんなやつが俺達のステージへと上がってこようとする…

てめぇなんか脇役どころか、観客で十分だ。
おまえには傍観者が一番お似合いだって話だ!!」


「!!!
昔の俺と今では違う!!

確かに俺はエレクトの力は持たない…


それでも、見せてやるよ…
そんな俺でも、どれだけ力を持っているのかを!!!」



キング・ヤコウ

ついに覚悟を決めた。


(やってやる…!!

俺だって今まで、決して遊んでたわけじゃない!!
勝つ…ジンをここで俺が倒す!!)


ヤコウがジンを標的にし、向かっていく。

すると嵐がジンをかばうように、さっとジンンの前に立った。


「私がやりましょうか…?」


「いや…昔のよしみだ…

俺にやらせろ」


ヤコウは“ライト・リミテッド”
“光”の力を放った。


「くらえジン!!

こいつはただの光ではない…不可視光の放射線!!
目には見えまい!!」


「確かに…何も見えねぇな…

てか本当におまえ、なんかしてんのか?」


「!!!」


目の前にいたはずのジンが、次の瞬間には自分の背後にいる。


この男はリミテッドの力だけが強いのではない…

身体能力はもちろんのこと、知力・体力、すべてにおいて頂点に至る。


(いつの間に背後に!?

くそっ…手下ばかり動かして、自分は決して動くことはない…
腕は落ちていると思っていたが…)


「何もしないんだったら、俺からいってやろうか?」


「!!!

(来る!!エレクトの力か!?)」


「何をそんなビビってんだ?

大丈夫だって!
おまえごとき…エレクトの力、使うまでもない」


「な、なめやがって…」


ジンは完全にヤコウを見下していた。

そんな余裕からか、少し話を始めた。


「なぁトウマ…

レトイン…
分かるだろ?誰のことか?」


「………

あぁ…」


「なんであんなにまでジョーカーを潰そうとするレトインが

おまえのキングの存在に対しては、何も手出ししないのは、なぜだか分かるか?


実際、俺もおまえもやってることは、そうは変わらない…
なのにてめぇには目を向けない…

なぜだと思う?」


ジンの言うとおり、レトインは以前、善にこう言っていた。


『キングは相手にするな』、『ジョーカーだけ頭に入れておけばいい』


と、確かにレトインは言っていた。
このことをジンが知っていたわけではない。

だが、ジンには分かっていた。
そうレトインが善に言っているであろうことを…



「教えてやろうかトウマ…
それはな…




おまえが弱いからだよ」


「!!!」


「おまえなんていざとなれば、簡単に殺せる。

そうレトインが思っているからだ!
確かにてめぇの能力は強い、最強だ。


だが“それだけ”だ!!」


「さっきから言わせておけば好き勝手言いやがって…

(こうなれば、ほぼすべての力を消費する

“全身放射”!!
こいつをやるしかない!

これさえ放てれば、ヤツとてかわすことなど不可能!!)」


人の弱みにつけ込むことが大好きなジン。
ベラベラとよくしゃべる。


「それだったらおかしいじゃないかって…?

だったらなんでこの俺がキングにスパイを送る必要があったのか?
そりゃ変な話だよな…


いつでも殺せような相手なら、スパイなんて手、使う必要ない…
けど、キングに俺はそこまでした…

その理由も簡単だ…
教えてやろうか?


それは単におまえの絶望した顔が見たいから。
なっ?簡単だろ?

最高だったぜ!ずっと信じてきたやつが敵だったと分かった時のおまえの顔!


悲痛、嘆き!!
俺にとっては最高だ!何年もかけて仕込んだかいがあったぜ!!」


ジンという男…
この完全なる“悪”の男が、楽しそうにヤコウに話しかけている。

その間、ヤコウは自らが持つ最大の攻撃のための
メンタルをじっと溜めていた。


(楽しそうに話していられるのもここまでだ!!

もう終わりだ…ジン!!
今日でジョーカーは終わりだ!!)


ヤコウがすべての力を放とうとしている。
恐らくこれをくらえば、ジンもひとたまりもない。

ヤコウがその力を放とうとした、その瞬間…


ジンの左手が、強く光った。


「あっ…

使っちった…エレクトの力」


ヤコウは力を放つ寸前…
ジンのエレクトによる攻撃を受けた。


「ぐっ…ジ…ジン…」


その力は、今までにないほど強力な力。

その力をジンは一瞬にして作り上げた。


「わりぃな。約束破っちまった…

まぁでも、俺にエレクト出させたんだ…
喜んでいいんじゃねぇか?」



(くそっ…ジン…
腕がなまってるどころか…

上がってやがる…!!


ジンの強さは…分かってはいたんだがなぁ…

レトイン…
おまえがまえ言っていた言葉の意味が、ようやく分かった…


あの時は…
俺に対する、単なるひがみだと思ってた…)



『一人はおまえの方だろ』



(本当に俺は一人だった…

エーコもいつのまにか、善達にどんどん惹かれていっている…


一番信頼していた嵐は、ジンの手下だ…


おまえの言うとおりだ…
だいたい昔から、全部おまえの言うとおりだったな…

“あの時”の償いのつもりで始めたことだったが…
俺は何一つ、一人ではできやしなかった…


なぁ…
この思い…どう伝えればいい…?

死にゆく者が、今ここでどう伝えればいい…?


じゅ…
いや、レトイン…

俺は…俺は………)



「じゃあな。友よ」


ジンは嵐を連れて、血を吐きながら倒れていくヤコウを背に
去っていった。



あまりにも早すぎた決戦
キング・八光VSジョーカー・ジン


その結末は無残なものとなってしまった。


仲間を失い、すべてをヤコウは失った。
そして、この数分後…



キング・八光 灯馬は
誰に気づかれることなく


死亡した。





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"キング・八光 灯馬
VS
ジョーカー・二階堂 仁"
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