3BECAUSE 第37話
ライジングサンVSジョカー四天王・琢磨

大悟とエーコは倒れ、残すは善と志保の2人。
琢磨はここに来て初めて本気を出した。


天井にあった、いくつもの電球を自らの手で破壊し
一切の光を封じ込めた。


すべては“闇”に包まれた。









3BECAUSE

第37話
 「2度目の終わり」





「これか…俺達が最も恐れていた、最悪の事態は…」


「完全にこのエリアは俺のものになった。

もうどうあがいても俺には勝てねぇ!!」


善達は闇に覆いつくされた。
足元すらよく見えないほどの暗さだ。


「これじゃ…何も見えないじゃない…

しかも相手は“闇”の力…
どうすればいいの…」


(くそっ…こうなるまえに、やつが余裕こいてる間に倒さなければならなかったのに…
 
何か…何かいい手はないか…
そうだ!!)


善は何かを閃いた。


「すべてが闇なら…
俺の“火”の力でなんとかしてやる!!」


善は残された力を振り絞って、火の力を放とうとした。
しかし…


「メンタル切れだよ…橘善。

今のおまえに、この大きすぎる闇を打ち破るほどの力は残っていない!」


今の善には、あまりにもこの闇の存在は強大すぎた。
このテリトリーを脅かすことなどできない。


「さぁ…これで終わりにしよう、橘善!!」


ついに闇に包まれた琢磨が、善達を仕留めにかかった。


「どこだ…?どこにいやがる!!
出て来い琢磨!!」


琢磨が闇の中を、自由自在に駆け回るのが分かる。
しかし姿、形は一切見えない。

大悟が闇に包まれれば
『琢磨のフィールドと化す』

そう言っていた意味が、ようやく理解できた。


「いいか善?リミテッドの力とはな…
今いるフィールドに大きく影響するものだ」


その話は、以前志保からも聞いたことがある。
志保が有するウォーター・リミテッドならば、水の多い場所…

すなわち海や川などが戦場となると、より強力な力を発揮することができる。


琢磨が有するダーク・リミテッド
まさに闇に包まれた今こそが、より強力な力を発揮できることとなるのだ。


「俺は今、闇の力を徐々に徐々に、体に纏い続けている…

その蓄積された力を、大鎌にのせておまえをぶった斬る!!
それですべてが終わる…」


「チッ…

(ただでさえこっちは体もボロボロだっつーのによ…
居場所すらよく分からねぇなんて…

どう防げばいいんだ…?)」


善は少し静かになり、しばらくして言った。


「志保…

覚えてるか?このまえ話したこと…」


「えっ…?」


志保の居場所すらよく分からないほどの闇。
声だけがすべての頼りである。


「俺がやられても…大悟やエーコが倒れようとも…


命ある限り、すべては終わらないって話だ…」


「………

覚えてるわよ…」



四天王・琢磨と戦う前夜。
善は志保とこんなことを志保に言っていた。


『なぁ…志保…

明日の四天王戦…
もし俺が負けそうになったら…


おまえらだけは逃げてくれ』



これは決してマイナスな考えで出た発言ではなく
例え自分が死んでも、ライジングサンの誰かがジョカーを倒す。

先を見据えた、善なりの覚悟であった。


「まだ大悟もエーコも生きてる…

死んではいねぇ…
2人をつれて、志保、おまえは今すぐこの場を離れろ」


「!!!

ば…ばか言わないでよ…
それに、私もあんたといっしょに覚悟決めるって、そん時言ったでしょ…?

あんたこそ、そのこと忘れたわけじゃないでしょうね!?」


「うるせぇ!!!
いいから早く言うとおりにしろ!!!」


善は志保の言い分など聞くこともせず、思いっきり叫んだ。


「時間がねぇんだ…早くしろ…

ヤツの狙いはきっと俺だ!
ここで…ここで全員死ぬわけにはいかねぇんだよ…」


「善……」


すべてが丸聞こえの琢磨が、楽しそうに言った。


「なんだ…あきらめたの?

まだまだこれからなんだろ?
まだ俺は“見てない”んだって…」


「黙れ!!だからわけ分かんねぇつーの!!

志保達を逃がしてから、てめぇとの勝負を存分に楽しむんだよ!!」


「ふっ…
ホント口だけは達者なんだから…

もういいだろ…?
死ぬ準備もできたはずだ…


死ね!!!橘善!!!」


琢磨がまわりの闇の力を吸収し、すべてを鎌に込めた強力な力
その力を、善めがけて琢磨は解放し、鎌を振りぬいた。


「ぐっ…!!!」


気配を直前で感じた善は、二刀流となった2本の火の剣で
必死に攻撃を防ごうとした。

無論、その程度の防御など、無意味である。


しかし…
善の手には、琢磨の攻撃など一切感じ取ることはできなかった。


「………?」


善が真っ暗闇の中、うっすらと目に写ってきたものは…
ゆっくりと膝から落ちていった、志保の体だった。


「志保!!!!」


志保が善の身代わりとなり、琢磨の攻撃を受け止めていた。


「なんで…おまえが…」


「あいつの狙いはあんただがらね…
闇の中、あんたの“声”を頼りに来た…

水の壁…作ったけど…
エーコみたいに、うまくいかないもんね…


善…逃げちゃだめ…だよ…」


そう言い残して、志保は倒れた。


「志保!!!

逃げちゃだめって…
こうなるから…こうなって欲しくないから!!

だから…言ったんじゃねぇかよ!!!」


「あぁ~ぁ…斬ったのは志保か…

チッ…意外と水の壁…
抵抗力あるじゃねぇか…

まぁいい…これで残すは善のみだ。
めんどいけど、また力を溜めるまで!」


琢磨は、先程と同じように、また闇の力を集めだした。
今度こそ…攻撃を受けるのは善だ。


「大悟…エーコ…志保…」


善はとうとう最後の一人となってしまった。
志保が言い放った言葉が、妙に耳に残る。


『善…逃げちゃだめ…だよ…』


(逃げるなって…だったらどうすりゃいいんだよ…

勝てんのかよ!こんなんで…)


仲間を失い、善に覇気もなくなってきている。
決してなってはいけない、弱気な善となっていた。


(あぁそうかい…
やればいいんだろ…?やれば?

どうなっても知らねぇかんな…
やってやるよ…


もうあいつの攻撃は防がねぇ!
こっちも…おもいっきし、ぶった斬ってやるよ!!)


もう善もヤケクソになってしまっていた。
こんな状況の男に…



勝利の女神は微笑むわけがない。



「さぁ…今度こそ…
本当の本当の終わりだ…

死ね!善!!
終わりだ!ライジングサン!!!」


琢磨は善にむかって、すべての力を解き放った。
それに対抗して善も…


(こうなりゃ…なるようになれ!!

終わるなら…
終わっちまえ!!!)


がむしゃらに琢磨に突っ込んだ。
結果など、分かりきっていることである。

善は、この琢磨の攻撃で
間違いなく…



死ぬ。



しかし…




バチバチバチッ!!!



とてつもなく大きな音がこだました。
そして…

闇しか存在しないはずのこの空間に…
強い“光”が差し込んだ。


「なっ、なんだ!?
いったい何が起こった!!??」



「フン…あきらめた者に勝機などない…

“あきらめない男”があきらめれば…
残るものなど何もないか…」


誰かが、少し上の方でそう言ったのが聞こえた。
善は少し上を見上げた。

工場の外へ通じる、2階の階段の入り口に
その男は立っていた。



「レ…レトイン……」


そこにいたのは、ライジングサンのメンバーの最後の一人
レトインがいた。


「なんでおまえが…ここに…」


激しい音と、強い光…
工場内には、大きな雷の力が放たれていた。

雷、すなわち“光”
その大きな光は、琢磨の闇さえ吹き飛ばすほど大きな力だった。


「俺の闇を壊すとは…

おまえ…何者だ!!!」


琢磨の投げかけなど、まるで答えることなく
レトインは一言善に言った。


「おまえなんて…

俺がいなければ、こんなもんだ」


「!!!」


善の体の中に、“何かが”フツフツと込上げてきた。


(何やってんだ…俺は…
何をやってたんだ俺は…

みんなに逃げろなんて言っといて、全員やられちまって俺だけが残って…

ここまでみんなが繋いでくれたのに、ヤケになって最後は諦めた…


しまいには…
自分から突き放したレトインに助けられた自分がいる…

情けねぇ…情けねぇよ…
俺は…俺は…)

「何やってたんだよ!!!!」



善は心の底から叫んだ。
自分を憎み、自分に激怒した。

すると、善から…


レトインの力とはまた別の
“強い光”が放たれた。


琢磨は善を見て、目を疑った。


「こ…これは…!!」


善の右手に刻み込まれた謎のマーク
そのマークが、強く光り輝いている。

それとともに、善の体は真っ赤な炎に全身包まれた。


その姿を見たレトインは、心の中でつぶやいた。


(そうだ…善…

それだ…その力だよ!
今こそ、目を覚ますんだ!!

おまえは…選ばれたんだよ…
奇跡の中の奇跡…


“リミテッド・エレクト”)




第37話 "2度目の終わり" 完
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