3BECAUSE 第34話
「そいつは俺の力で作り出された

“ドッペルゲンガー”


“ダーク・リミテッド”

“闇”の力さ」


闇の力を持つ、ジョーカー四天王

“闇西(あんざい)琢磨”とライジングサンの戦いが、始まった。





3BECAUSE

第34話
 「ライジングサン&キング・エーコVSジョーカー四天王・琢磨」





「闇の力…
 こいつは俺の影…俺の分身ってことか!?」


「そうなるね!もう一人のあんたってこと。

姿、形、力までもが同じもう一人の自分さ」


四天王・琢磨が自信満々に言った。
そして…


「あんたら4人分、全員の影…
作らせてもらうよ」


そう琢磨が言うと、志保とエーコの影までも出現した。


「じゃあしばらく俺はそこで横になってってからさぁ!

この影達としばらく遊んでてよ」


「な、なんだと!?」


「俺今すげぇ眠いんだよね…
 
まっ、そーいうわけなんで」


メンバー全員の影の分身を作り出した琢磨は
少し後ろに下がったところで、本当に横になり始めた。


「ふぁ~ぁ…ねみぃ…」


「あたし達…
完全になめられてるし…」


「そうみたいだな…

けど四天王のまえに、この影…
なんとかしなきゃならねぇみたいだ」


闇の力で作られた、ドッペルゲンガーが一斉に動き始めた。


「チッ…俺対俺ってか…?」


善の前には善の影。志保の前には志保の影。
各々、自らの分身が立ちふさがった。


「それなら…
“イフリート・ソード”!!」


善は火の力で、得意の剣を作り出す。
すると…


「な、なにぃ!?」


向こうの影も、善と同じように剣を作り出した。


「こ、こんなとこまで同じなのか…?」


横になり、リラックスした態勢をとっていた琢磨が言う。


「だから言ったじゃーん!
影はもう一人の自分だってよー」


「うるせーー!!
そんな格好で黙ってろよ!!

どうもやる気が出ねぇな…」


「そんなこと言ってる場合じゃないぞ善!!

この影…
本当に自分とまるっきし同じだ…」


「マジかよ…
でも向こうの持ってる剣…

あれは火の力じゃねぇぞ!?」


「あぁ…
ファイヤー・リミテッドの能力までは真似できないみたいだがな。

力は同等の、闇の力で作られた剣…
そんなとこか…」


善が大悟との話に気をとられていると…
善の影が、善に攻撃を仕掛けてきた。


「うおっ!あぶねっ!」


影からの一太刀をくらいそうになるが…



キン!!!


「えっ…?氷の盾…?」


「危ないじゃないし!
本当にやる気だせし!!」


「エーコ!!」


エーコがリミテッドの力で作った氷の盾で
善を敵の攻撃から守ってくれていた。


「助かった!わりぃなエーコ!!」


「こっちだって自分の相手で忙しいんだし…

気合が足りないし!!」


「お、おう!!」


エーコを信用していいかどうか、不安でいた大悟であったが
今のを見て、少し安心していた。


(なんだ…エーコ…
しっかりやってくれてるじゃないか…

連れてきて正解だったな!
きっとエーコの守りの力が役に立つはずだ!)


徐々に認められてきたエーコであったが、実は本人は…


(冗談じゃないし!!なんであたしが善なんかを…

でも仲間のように接してないと、トウマさんからの指令をうまくこなせないし…
第一、あたしもこんなとこでいっしょに死ぬわけにはいかないじゃん!!)


嫌々助けていたのであった。



気合を再度入れなおした善は、自らの影に挑む。

しかし、自分の繰り出す攻撃は、相手に全部止められてしまう。
けれども反対に、向こうからの攻撃もうまくかわしている。


「こいつ…本当に自分と同じなんだな…

お互いの力が、マジでいっしょだ…」


ここで志保が、ポツリとつぶやいた。


「これってさぁ…
嫌な予感がするんだけど…

自分の分身と戦って、決着はつくの…?」


「確かに…
力が同じなんだ…いつまでたっても互角…」


志保の嫌な予感は当たっていた。
力も同じで、自分の分身、思考回路まで同じ…

それではいつまでたっても決着はつくわけがない。


「それだとしたらまずいんじゃないか!?

こっちはまだ本体の四天王に一切ダメージを与えてないぞ…?
これじゃ四天王と戦う前に、こっちが完全にメンタル切れしちまう!!」


「いや、メンタルの心配ならむしろ向こうがするべきだ。

これほどまで完全な分身を、いっぺんに4人も作り出している…
これこそ大量のメンタルを消費しているはずだ!!」


「でも…あれ見てよ…

異質な音も聞こえるでしょ?」


メンバーは志保が指差す方を向いてみる。


「おいおいおい…

横になってるどころか…
もうカンペキに寝てるじゃねぇか!!!」


影に対戦の相手を託し、琢磨は横になるどころか…
しまいには深い眠りに入っていた。


「がぁ~っ…がぁ~っ…」


「い…いびきまでかいてるし…」


この男は、どこまでやる気がないんだ…



そう思われたが、実はそういうわけでもなかった。


「けどこれ…あいつの行動…

理にかなっている…?」


「えっ…?」


「人の体が休まる時って…睡眠じゃん?

寝ながら戦って、ふざけんなし!!
って、思うけど…

あいつは影に戦わせながら、自分はメンタルの回復をはかってる!!」


「じゃあこれも…
やつの作戦のうちの一つなのか…?

(単に眠いわけじゃなくてか!?)」


「ヤツが考えてやってることなのかどうかは知らんが…

メンタルの消費は抑えられてるのは事実。
この影との戦い…苦戦をしいられることになるぞ…」


四天王・琢磨。
いかにもやる気がなさそうに見えるが、彼も正真正銘の四天王。

彼の取る行動には、必ず何らかの意味がある。



寝てる琢磨をよそに、一同はまた影達と戦い始める。


「だぁー!くそっ!
これじゃキリがねぇ!!

俺じゃなくて相手が志保なら勝てる気がすんのによ!!」


「どーいう意味よそれ!!

えっ…でもそれ…
意外と名案じゃない!?」


「そうだそうだ!!
相手が自分だから決着がつかねぇんじゃねぇか!!

これが別の影なら必ず勝敗が着くぞ!!」


善の冗談まじりの一言が、ドッペルゲンガー攻略の糸口となり始めた。

善は対戦相手を変え、志保の影に攻撃を仕掛けだした。


「くらえ志保!!」



だが…


「!!!
じゃ…邪魔するなよ…」


善の攻撃は、敵のエーコの影の、闇の盾により防がれていた。
これではまだまだ、ドッペルゲンガーを攻略できない。


「この光景…
先程のこちらの光景とほとんどいっしょだな…」


「やっぱり一番厄介なのはエーコの盾だ…」


「そうよ!さっきから一番うざいのはあの女!!」


「ちょっと!!
あたしじゃなくて、あたしの“影”じゃん!!!

しかも志保のはマジの憎しみこもってるし!!」


役に立つと思われた、エーコの守りの能力。
だが、相手が悪かったのか、その能力があだとなっていた。


「よし!!
ならここはみんなで協力して、まずエーコの影を倒そう!!

全員で一人ずつゆっくり倒していこう!!」


「ナイスアイデアじゃん!!」


「善、今日はいつになく冴えてる!!」


「あんま褒められてる気がしなかったが…

まぁいい!
行くぞみんな!!」


ライジングサンのメンバーは一致団結し
まずは守りの能力を持つ、エーコの影に的を絞った。



しかし…


「こいつら…」


全員がエーコの影を攻撃しようとすると…
相手の影達も団結し、影のエーコも守ろうとし始めた。


「なるほど…
こちらが力を合わせれば…

むこうも同じように力を合わせてくるわけか…
予想以上に手強い…」


「もう!!!
なんなんだしこいつら!!!

姿や形、思考もいっしょ!
それだけでキモいのに、全身真っ黒なうえに全くの無口だし!!」


「ちょっと!エーコ!
冷静になりなさい…」


いつまでたっても攻略することのできないドッペルゲンガー。

エーコの苛立ちは徐々に増していき、今にも爆発寸前。
冷静さを失い始めていた。


「そうだし!!
この“影”!!!

あたしらに映る影があるからいけないんじゃん!!」


エーコがあることに気づいた。


「あの天井にぶら下がってる、薄汚い今にも切れそうな電球…

この光があるから、うちらに影が映るんじゃん!!
この電球を氷の力を撃ち放してブッ壊せば、影が消えるし!!

あたしって天才!?
よーし!今からこの電球を壊すし!!」


ドッペルゲンガーのトリックに気づいたエーコ。
影を生み出す電球に向けて、力を放つよう構えだす。


「やめろ!!!エーコ!!!」


すると大悟が大きな声を出し、エーコを止めに入った。


「な、なんでだし…

あの“光”を放つ電球さえ壊せば、影は全部消えるじゃん!!!」


「よく考えろエーコ…

ヤツの能力は“影”か…?
あいつの持つ能力は

“ダーク・リミテッド”
“闇”の力だぞ…?」


「あっ!!!」


大悟に言われて、ようやくことの重大さにエーコは気づいた。


「もし今エーコが、あの電球を全て破壊していたら…

今頃この工場内は、完全に“闇”に包まれている!!」


そう…
外は真っ暗闇。

外の光は一切入っては来ない。
唯一の光は、わずかにある天井の灯り。



「あの光を失えば…

もはやこの空間はヤツのフィールドと化すだろう…」


「マジかよ…

でもそれおかしくないか?
だったらなんで最初から真っ暗にして戦わないで、影なんか作って回りくどい戦い方を…

って…もしかして…」


鈍感な善も、一人遅れて今気づいた。


「あいつ…
まだまだ本気じゃない…?」




闇に相対する光。
恵みの光は、まだ僅かに降り注がれている。

いつ消えても不思議ではなく、チカチカと点滅を繰り返し続ける。


その光が消えた時こそが、終わりの瞬間なのかもしれない…
絶望へ向けてのカウントダウンが、始まろうとしていた。





第34話 "ライジングサン&キング・エーコVSジョーカー四天王・琢磨" 完
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