3BECAUSE 第29話
「行こう。
キングが待つところへ。

待っていてはだめなんだ…
動かなきゃ…進まなきゃ…

俺達の未来(明日)は、俺達で切り開く」





3BECAUSE

第29話
 「晴れのち曇 そして雷雨」





善の中で、気持ちは固まっていた。


「フン…おまえのことだ。そう言うと思ったさ!」


「でも…本当に大丈夫なのかしら…?

キングのリーダーが待ち受けているのよ?
やつはリミテッドの中でも“最強の能力”を持つと聞くわ…」


「最強の能力…

くそっ!せめてそいつがどんな能力かさえ分かれば、こっちも対策が打てるんだが…」


今の大悟のセリフに対し、レトインが言った。


「知ってるぞ。キングのリーダーの能力」


「!!!
なっ、なんだと!!??」


「“ライトリミテッド”

“光”の力だ」


「光の力…」


「光と言っても、ただの光ではないぞ。

あいつの放つ光は“放射線”。
目に見えない、不可視光だ」


「!!!
目に見えないだって…?」


「それこそが最強の能力とまで言われるゆえんだ。

そして奴が放つ放射線を浴びてしまえば…
全身被爆の場合、数時間で死にいたることもある」


全員が言葉を失った。
目に見えない力を相手に、戦う術はあるのか…?


「そんなの…どうすればいいって言うんだよ!!」


「目に見えはしなくても、リミテッドであれば体で力を感じることができるはずだ。

奴が光を放つ際、必ず力は放出される」


「その力をいち早く感じ取って、かわすしかないと…?」


「あぁ。もしくは奴に力を使わす隙を与えないこと。

それぐらいしか手段はない…」


静かになり、黙ってしまっていた善が問う。


「もし判断を誤って、遅れをとってしまったら…?」


「そこに待つのは死だ。

集中力は全く欠けない。一瞬の油断が命取りになる」


「そんな状況下じゃ、メンタルの消費量は恐ろしく激しいでしょうね…

そんなやつを相手にしろって言うの…?
ねぇ…本当に行くの…?善…」


「………

でもよ…いずれかはキングも倒さなきゃならねぇんだ…

だから…行くしかない…」


「どうあっても、意志は曲げないつもりなんだな…」


「悪いな…それに…
キングのエーコと黒崎が、俺達に話があると言っていたあの時…

やろうと思えば俺たちを簡単に殺せたんじゃないか?
俺たちは四天王との戦いの後で、傷だらけだった…

しかも黒崎は相当なリミテッドの使い手だ…
それでも奴は俺達には手を出さず、キングのリーダーに会わせたいと言った…」


善の推測に、レトインも言う。


「確かにな…俺達の命が目的なら、あの時始末していただろう…

何か他の目的があるのかもしれないな。

(善…よっぽど考えたんだろうな…
おまえにしては冷静な判断だ…)」


「そう…分かったわ。覚悟を決める」


「ありがとう…3日後、全員で行こう!」


「あぁ!!」




そして、3日後。運命の日が訪れる。


「よし…エーコからもらった地図…
この地図の示された場所に行くぞ」


いざ、出発…という時に、レトインが一人この場を離れようとした。


「おい!!」


そこを大悟がレトインの腕をがっしりつかみ、放さなかった。


「どこへ行く…?レトイン…」


「………

見逃してはくれなかったか…」


「当たり前だ」


大悟は気付いていた。この3日、レトインの様子がおかしいことに。


「フン…俺のこと信じてくれているんじゃなかったのか?」


「あぁ、信じてるさ。おまえは仲間だ。ライジングサンのメンバーだ。

だから連れて行く。
善は全員で行こうと言ったんだぞ?」


「………

そうだったな…分かった」


「おーい!大悟にレトイン、2人で何やってんだよ!
早く来ねぇと置いてくぞ!!」


善と志保は、早々ともう地図の示す場所に向かっていた。


「すまない!今行く!

ほら、行くぞ!!」




ライジングの4人は、地図の示された場所へと向かう。

その道中、不思議と会話はなかった。


目的は俺たちの命ではない…

そう思っていても、心の中で恐怖はあった。


最強の力と唱われる、キングの“ライトリミテッド”

いざ戦うとなったとしたら、果たして勝てるのか…?


そんな恐怖心が、メンバー全員にあった。
そしてとうとう、地図の示された場所に着いた。


そこは廃墟のような何もないような場所で、きっと誰も近づこうとはしないだろう。

とても怪しげな雰囲気をかもし出していた。


そこに待っていたのは…


「来てくれると信じていましたよ」


「偉いじゃん!ホントに来たし」


キングの黒崎と、エーコの2人だった。


「さぁ…こちらへどうぞ。リーダーがお待ちです」


黒崎がキングのリーダーのもとへと案内する。

とうとう対面する時が来たのだ。


「リーダー!ライジングサンのメンバーを、お連れしました」


廃墟の中には、一人男が立っていた。


(こいつが…“キングのリーダー”…)


「初めましてだな。橘善。

俺がキングのリーダーを務めてる

“八光 灯馬”(ヤコウ トウマ)だ」


その男の第一印象はとても不気味だった。

なぜなら、全身を覆うように包帯が巻かれていたからだ。


服は着ているのだが、見える肌は目の辺りだけ…

全身を包帯でぐるぐる巻きにしているであろうことが、なんとなく分かった。


(気色悪い野郎だなぁ…しかし…

気をつけなければならねぇ…
こいつが“ライトリミテッド”、放射線を放つ男…

いつ仕掛けてくるか分からねぇ…)


善が警戒態勢の中、一人大悟だけがホッとしていた。
なぜなら…


もしかしたらレトインがキングのリーダーなのでは?

という、推測があったからだ。
しかし、キングのリーダーを目の前にした今、その可能性は無くなった。


大悟がレトインの方に目をやる…
レトインはみんなとは違い、中には入らず、外で待っている様子だった。


『あの野郎!何一人だけ外で…!!』


と、思ったが、キングとは関わりがなかった事が分かり

そのぐらいなら許してしまえるような、そんな気分になっている大悟がいた。



「よく来てくれたな…橘善。

始めにひとつだけ言っておくが、俺達はおまえらとやりあうつもりはない」


「!!!」


「俺たちは同志じゃないか…」


「同志だと…?」


意外だった。善の中で、完全にイメージがついていた。

キング…そしてその組織のリーダー…


そいつは極悪な犯罪者で、“悪”であると…

まさかこんな友好的な感じで、話してくるとは思ってもいなかった。


「なぜ、俺たちをここに呼んだ…?
まずそれを答えろ…!!」


「………

そうだな…先にそれを伝えるべきだな…
分かった。単刀直入に言おう。



手を組まないか?俺たちキングと」


「!!!
なんだと…?ふざけるな!!」


「ふざけてなんかいないさ…

キング、ライジングサン…
その互いの敵であるのが“ジョーカー”だ。


ジョーカー・ジン…
奴は強い。俺達だけの力では、正直かなわないかもしれないんだよ…」


「てめぇ…勘違いするなよ!?

ジョーカーは確かに俺達の最大の敵だ。
だが、それ以前にキング!!

てめぇらも俺達の敵なんだ!!
味方だと思ったら大違いだぞ!!何が同志だ!!」


「そんなことは百も承知…

だったらこれならどうだ?
一度俺達と手を組み、ジョーカーのジンを倒す…

そしてその後、俺達は敵同士に戻る…
その時になってから、キングとライジングサンの決着をつける…

これならどうかね?」


「………

どんな友好的な態度を取ろうが、俺は騙されないぞ!!
そーやって俺達を利用するんだな!?」


「そうか…
どうやらおまえは、よっぽど俺達キングのことを、信用してくれてないみたいだな…」


「当たり前だ!!くだらねぇ話で呼び出しやがって…

おい!みんな帰るぞ!!」


「ちょっと善…いいのもう…?」


「これ以上何を話すって言うんだよ!!」


立ち去ろうと外へ出ようとする善に、黒崎が声をかける。


「まったく…分からない男ですね…

リーダーがあんなにも下手に出ているというのに…


優先順位を考えろって話なんですよ。
本当に野放しにしてはならないのは、一体どちらかってね…

少し考えれば答えはすぐに出るはずだ」


「うるせぇ!知るかよそんなの!!」


今度こそ外へ出ようとする善に、キング・ヤコウが言った。


「橘善…だったらおまえは…
ジンを倒すことができるのか?」


「!!!」


善の足がピタリと止まった。


「おまえの力で…おまえだけの力で、ジンを倒せるって言うんだな?」


「そ、それは…」


「その自信がなければ、おまえの正義は口先だけにしかすぎん。

ジンを倒せなければ、何も救えやしない」


何の反論もなかった。まさにその通りだった。

ジンを倒すことができなければ、何も終わりはしない…


ヤコウが善の傍まで歩み寄る。


「もちろん今すぐ結論を出せとは言わない…

ゆっくり考え、俺たちと手を組むことを…」


善のすぐ隣まで来たヤコウは、そこでついに気づいてしまった…

気づいてはならない、やつの存在に…


「!!!
お、おまえは…!!なぜ貴様がここにいる!!!」


先程まで冷静のだったヤコウが、突然慌て始めた。


「……?
おまえって…レトインのことか…?」


「レトインだと…?ふざけるな!!!」


「久しぶりだな…トウマ」


「えっ…?レトイン…
キングのリーダーとは顔見知りなのか…?」


「橘善!!こいつとは一体どういった繋がりだ!?」


「繋がりも何も…レトインはライジングサンの一員だからな…」


「なんだと!!?だったらさっきの手を組むと言った話も、一切なしだ!!!

この男がいる限りな!!!」


「お、おい!何なんだよ急に…
どーいうことなんだよ!?」


突然態度が変わったヤコウに、戸惑う善。


「知らないのか…?だったら教えてやるよ…

レトイン…この男…この男こそが!!



ジョーカーを作った男であり、ジョーカーの創設者だ!!!」


「!!!
なっ、なんだって!?

ほ、本当なのか…?レトイン…?」


「………」


「ジョーカーを倒そうとしているおまえが…

まさかジョーカーを生み出した男の肩を持っているとはな!!
とんだ馬鹿げた話だ!!」


驚愕の事実。善は驚いた。
しかし…

なぜか信じられなかった。ヤコウのついた嘘なのではないか?
そう思った。


「はっ!何だよそれ!そんなの信じるかよ!

第一、レトインはジョーカーを作ったどころか、リミテッドでもねぇじゃねぇかよ!
なぁ…レトイン!!」


善はレトインと初めて出会った頃から思い出していった。

レトインがリミテッドなわけがない…
善がレトインの肩をポンと叩こうとする…

が、善の手が止まった。


(待てよ…俺がレトインと会って間もない頃…

レトインはこう教えてくれた…

“リミテッドである者は、他のリミテッドである者の居場所が分かる”

と…だから俺はジョーカーから逃げられないんだって…
それは分かる…でも…その前に…


なんでレトインおまえは、俺がリミテッドであると分かったんだ…?)


「………

いや…レトイン…直接おまえの口から教えてくれ…

おまえはリミテッドなのか…?
そして…ジョーカーを作ったのはおまえなのか…?」


善がレトインに聞くと、突然空が曇り始め、雨が降り出した。


ピカッ!!ゴロゴロッ!!!


今度は雷まで鳴り始める。
レトインが答えた。


「善…正直に答えよう…

俺はリミテッドだ。
そして、ジョーカーを作ったのは…

この俺だ」





第29話 "晴れのち曇 そして雷雨" 完
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