3BECAUSE 第28話
「いないんだけど…
善とレトインがどこにも…」


「!!!
なっ、なんだと!!??

さ、探せ!!早く善を探すんだ志保!!」


「何をそんな焦ってんのよ…
すぐ帰ってくるとは思うけど」


「いいから!!!早く善を探すんだ!!!」


「なんなのよ…分かったわよ!!」


(レトイン…貴様は信用できん…

嫌な予感がする…
善…善が危ない!!!)




3BECAUSE

第28話
 「Second Because」





「志保、いたか!?」


「いない…どこにも…」


2人は必死になって、善とレトインを探していた。


「そうだ!善はリミテッドよ。
そしてあいつはリミテッドの力の放出を抑えられないはず!」


「そうか!その手があったか!!」


リミテッドとは、意図して力を使わなかったとしても

無意識のうちに、常に体からリミテッドの力を放っているのである。


熟練者であれば、その力を抑えることができる。

それは経験によって自然に身につくものであり、そのため時間が必要である。


そして、リミテッドの者は、他者のリミテッドの力を感じ取ることができるのだ。

ゆえに、まだ経験の浅いリミテッドの者は、熟練者のリミテッドから逃げ隠れできない。


「善はまだリミテッドになって日が浅い。

それほど遠くには行っていないはずだ。
これであいつの居場所が…

何……!?」


「どうしたの…?

!!これは…

(善の居場所が分からない…?
善はリミテッドの力を放つのを抑えられないはずなのに…)」


「バカな…
この短期間のあいだに、力を抑えることを可能にしてしまったというのか!?

なんて才能…素質だ…善…」


「これで…探す手はないわね…」


「あぁ…こーなったらもう、片っ端から探すしかない。

(善は抑制方をマスターしたのか…?
それとも善はもうすでに…)」



それから20分が過ぎた。ますます大悟は焦り出す。

いまいちピンと来ないながらも、必死に探す志保。


「見つかったか!?志保」


「いえ、どこにも…」


「くそっ…どこに行きやがった…
どこにいるんだよ!!

善…いるなら返事しやがれ!!!」



「えっ、何!?」



「!!!」


大悟の後方から、声が聞こえた。
振り返ると…


「なんだよ大悟。バカみてぇにデカい声あげてよ!」


「善!!!」


少し離れたところから、善とレトインがいっしょになって、こっちに向かって歩いてくる。


「なによ大悟…普通に2人とも帰ってきたじゃない…」


「心配したんだぞ!!善!!」


「ん…?心配したって…

俺もガキじゃねぇんだからよぉ…」


「今までどこに行ってたんだ!!探したんだぞ!?」


「………

どこって…なぁ…レトイン…」


「あぁ……」




数十分程前


『あぁ~…疲れた…ジョーカーにキング…

これじゃ体がもたねぇよ!!』


『善……』


『えっ?なんだよレトイン…
よく聞こえねぇよ』


『覚えているか?あの場所を』


『あの場所…?』


『おまえがジョーカーを倒すと誓った、あの海が見える場所だ』


『あぁ…志保がまだ敵で、倒したばっかの時だったな…

覚えてるけど…』


『今からそこに来い』


『えっ!?今から?
こっからじゃけっこうあそこまで距離あんぜ?

ここじゃだめなのかよ?』


『だめだ。今すぐ来い』


『ったく…しゃあねぇなぁ…

おーい!大悟!
ちょっと俺らしばらく離れっからよー!

なんだよ…聞いちゃいねぇよ…
志保は疲れ切ってるし…まぁいっか!

行ってくっかんなぁ!』



そして、あの海の見える場所に着いた。


『わざわざこんなとこに呼び出してどうしたんだよ…』


『おまえに話があってな』


『話…?』


『言ったよな。最初に善に。

おまえにはやらねばならない理由が“3つある”と』


『あぁ…俺がジョーカーを倒さなきゃならない、訳わかんねぇ理由ってやつだろ』


『そうだ。おまえ自身は気づいていないだろうがな…

おまえは不思議な力を持ってる』


『不思議な力…リミテッドじゃなくて…?』


『そういった類のもんじゃないさ…

悪いが俺は、おまえについてのことを調べさせて もらった。

おまえは本当不思議なやつだよ…
学生時代、おまえは悪さばかりしていた』


『うっ……』


『だがそれでもおまえは、周りのみんなから好かれていた。

意外と人望もある。
普通そういうやつはな、周りの奴らに嫌われてくもんだ。

でも善は違った…
そして、今は確信をもって言える』


『………』


『善…おまえがリミテッドを変えろ』


『えっ…?』


『自分では分からないんだろうな…
今まで何一つ崩れることのなかったジョーカーが、崩れ始めている。

しかも内部からな。
志保に大悟、敵だったはずのやつらが、いつの間にかおまえの味方だ。

おまえはそんな力を持っているんだよ。
人を変える力…他人を巻き込んで、そいつの人生を変えちまうようなほどの力をな!!』


『巻き込んでって…あんまいい気しねぇな…』


『そんなことないさ。おもしろいもんだよ…

何の根拠もないのに、おまえの言葉には何か説得力がある。
不思議な力さ…』


『けっ!褒められてんのか、けなされてんのか分かりやしねぇよ!』


『いいか善…おまえは“あれ”になるんだ』


『あれ…?』


レトインが見つめるその先を見ると、そこにはちょうど

朝日、太陽が昇り始めていた。
以前と同じ光景だ。


『太陽……』


『そうだ。“希望の光”さ。
また今日が始まる。

そしてきっとまた陽が昇り、明日が来る…
明日があるから、今頑張れる。今を生きれるんだ』


『そうかもな…もし世界が今日で終わっちまうって言うなら…

何もする気失せるな。
学校だの勉強だの、将来のためって言われてきたもんな…』


『あぁ…よく人はどんな時でも、必ず明日は来るって言うけどな…

それは違うと思う。
何もしなきゃ、明日なんて来やしない』


『えっ…?そうなのか…?』


『例えそれで明日が来たとしても…
それは本当に自分が望んだ世界か?未来なのか?』


『そう言われると…自信ないな…』


『だから待っているだけじゃだめなんだ。
自分で何とかしなきゃ、自分から動いて頑張らなきゃいけない。

昇ってくる太陽を眺めているのだけではだめ…

善、おまえが“太陽”になるんだ。
おまえが“希望”になれ!!』


『俺が希望……』


『そうだ!!もしジョーカーが滅んだとしても…

また新たな第2のジョーカーが現れるだろう。
だから普通に倒すだけでは、何も解決はしやしない…

変えろ…おまえがジョーカーを変えろ!!』


『………』


『分かったか?善。
俺の言っていることの意味が…』


『あぁ、分かったよ。

レトインが俺のこと調べまくってる、ストーカー野郎だってことがな』


『おい!!善!!俺はふざけて…』


『冗談だよ!レトインがこんな臭せぇこと話すなんて、マジに決まってんだろ』


『………』


『変える。俺が変えてやる。
ジョーカーもキングも…全部まとめて俺が変えてやる!!』


『あぁ!!』




「………

大悟…どこ行ってたって言われても…

大したとこじゃねぇよ。まぁ気にすんな!」


「チッ…

(こっちはどれほど心配したことか…)」


レトインが大悟の横を通り過ぎようとした時

大悟がそっとレトインにささやいた。


「信じていいんだよな…?おまえのこと…」


「………
何度同じ事を言わせるつもりだ。

言ったはずだ。敵か味方は自分で判断しろとな」


そして、レトインが大悟から離れようとする…


「信じるぞ。俺はおまえのこと。
怪しいことだらけだがな」


「フッ…血相変えて善を探してたやつが、何バカなことを…



勝手にしろ」


そうして、レトインは大悟から離れていった。




善とレトインが戻ってきて、ようやくメンバー全員がそろった。

メンバーには、決めかねなければならないことがあった。


「どうするの?善…

3日後…キングに招待されているのよね…
答えは出たの?」


ライジングサンの一同は、キングの“リーダー”に招待されていたのだった。

危険を伴うため、善も慎重になっていた。


「向こうが何を考えているのかさっぱり分からないな…
これは罠かもしれんぞ…?」


善は静かに話し出した。

「今、2人と離れていた間、少し考えていた…

みんなに相談しないで、勝手に決めちまうのはどうかとは思うけど…

俺の中での答えは決まってる…」


「………

そうか。ならば教えてくれ。
俺たちは善についていく」



「行こう。
3日後…キングが待つところへ。

待っていてはだめなんだ…
動かなきゃ…進まなきゃ…

俺たちの 未来あしたは、俺たちで切り開く」






第28話 "Second Because" 完
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