3BECAUSE 第27話
「あ、ありえるわけないじゃん!!こんなの!!

さっきまで四天王と戦ってて、メンタルは切れてたはず…
それなのに一体こんな力が…どうして…」


「“メンタルの回復の速度”
こいつなら善は誰にも負けねぇんだ!!

ジョーカー、キングなんて目じゃねぇよ !!!」


「覚悟しろよてめぇ…

志保を、大悟をいたぶってくれた分…
いや、利子がつくぐれぇ返してやっからよ!!!」





3BECAUSE

第27話
 「消失」





(熱い…なんなんだし…この立ち上がる炎は…

これじゃ私…)


善が作り出した立ち上がる炎

“火炎地獄”は、志保を氷の中から救っただけでなく…


(私の“アイスリミテッド”の能力が、まるで力にならないじゃん…)


キング・英子からの攻撃も、完全に防ぐ形となった。


「はっはっは!さてはてめぇ…攻撃できないな?

志保の水の力に対し、あんたの氷の力は相性バツグンだったみたいだが…

どうやら俺の火の力は、あんたの氷の力に相性バツグンらしいな!!」


「チッ……」


「反撃できないんなら…さっさと終わらせちまうぜ…」


そう言うと善は、周りを囲っていた、いくつもの立ち上る炎を操作しだした。

そしてその炎を、一ヶ所にすべて集める。


すべてを吸収した炎は、更に勢力を上げ、肥大化した。

この莫大な力を、英子にぶつけるつもりだ。


「よし…準備は整った…」


(どうにかできないものか…)

「アイスニードル!!」


英子はなんとかして、攻撃を免れようとし

無数の氷の矢を、立ち上がる炎に向かって放った。
しかし…


「無駄だ。そんなちっぽけな攻撃じゃ、なんの意味もねぇ」


まったくビクともしなかった。
それほど強大な力だったのだ。


「終わりだぜ!キング!!

くらいやがれ!!!」


善はとうとう立ち上がる炎を、英子に向かって放った。


(避ける…?いや、無理…

でかすぎるし…)


ボロボロの体になって観戦していた大悟も、思わず起きあがって叫んだ。


「いけぇー!!この一撃で終わらしちまえ!!!」


(無理じゃん…どうすることもできないし…

終わった…)


英子は何もできずに、立ち尽くす。
終わりを覚悟した。

英子に炎が触れる…
その直前…



ほんの直前の出来事だった。



「何をやっているんですか…あなたは…」


「あ、あんた…!!!」


突如、謎の男が善達のまえに姿を現した。

そして…



「!!!

なっ…なんだと…!!??」


“ある力”を使い、強大な力の立ち上がる炎を…

一瞬のうちにかき消してしまった。


「か…かき消しやがった…

あのバカでかい炎を…
こ、こんなことありえるのか…!?」


「助かった…助かったよ“黒崎”」


「クロサキ…?

(こいつ…こいつももしや、“キング”のうちの一人…?)」


「まったく…何をやっているのですか…エーコ。

今日は話をするために来ただけのはず…
それなのにあなたと来たら…」


「仕方ないじゃん!!あっちから先に手出してきたんだし!!

あっちが全部悪いんじゃん!!」


「だからと言って…今あなたは完全にやられる寸前でした…

見張りに来といて正解でしたよ!」


トドメとした放った強大な力が一瞬にしてかき消されてしまい…

未だに何が起きたのかもよく分からず、呆然としていた善達であったが…


それに対して、あまりにもエーコと話を淡々続ける謎の男。

この男の余裕の表情に、善は焦りを感じ始めていた。


(なんなんだよこいつ…

今一体てめぇが何をしたのか分かってんのかよ…?
俺の最高の攻撃を、一瞬のうちに消しちまいやがったんだぜ…?

なのに、こいつのこの表情…
今のがまるで当然の如く、できて当たり前のような…

なんでそんな平然でいられんだよ…)


驚きと焦りを隠しきれないでいた善であったが、
先程の攻撃には、レトインでさえも驚いていた。


(すごい…
これほどまでの力を持っているとは…)


ここで大悟が言う。


「おい…さっきの攻撃…

貴様…貴様も“リミテッド”なんだな…?」


「!!
あぁ!すいませんね…

申し遅れました。
私、チーム・キングの一人。


“黒崎 嵐”


“ストーム・リミテッド”

“嵐の力”


どうぞよろしく」


「!!!
嵐…ってことはさっきの…

嵐の力で炎をかき消したってわけか!!??」


“ストーム・リミテッド”


一瞬にしてあの攻撃をかき消してしまう程の、強力な力。

しかし、それ以上に善は…


(それよりこいつ…自分から能力や存在を明かしやがった…

なんなんだ…なんなんだよ!こいつのこの余裕は!!)


何よりも善にとっては、そのことのが不気味で仕方がなかった。

そして、善が少し震えながら黒崎に聞いた。


「もしかして…てめぇが“キング”の頭、リーダーなのか…?」


すると、黒崎が冷静に答えた。


「いえ、私はリーダーではありませんよ。

リーダーは別にいます」


「!!!

(こいつがリーダーじゃない…?

ってことは、リーダーは更に上…)」


ここで黒崎が、静かに優しく言い出した。


「しかし…すいませんね…
みなさん…

うちのエーコがみなさんに手を出してしまって…」


「!!??」


「だから…悪いのはあっちだって何度も言ってんじゃん!!」


「今更どっちが悪いとか、先に手を出したとか、どうでもいいこと…

私が今日来た本当の目的は、あなた達にお話があったからなんです」


体をまだ十分に動かすことのできないでいる志保も、耳を傾けながら聞いている。


「そんなことあの女も言ってたけど…

話って、なんなの…?」

「そうよ!だから初めっから言ってたじゃん!

あんたらライジングサンに話があるって…
なのにこのバカ女が手だすから…」


「なんですって!?」


「やめろ。エーコ。
この任務はおまえではなく、私が行くべきだったな」


黒崎がうまくエーコを抑え込む。


「貴様…本当に俺たちを潰しに来たわけじゃないんだな…?」


「えぇ。だからさっきから何度も言ってるでしょ?

ここまで言って、もしそれでも私たちと戦うつもりでいるなら…
相手になりますよ。

“ストーム・リミテッド”は、あらゆる能力に相性がよく…
あなた達の能力すべてに相性がいい。

それでもやり合いたいと言うのなら…」


「!!!
わ、分かったよ!話せよ!!

(チッ…どうもこいつとは、能力以前に人間としての相性が悪いぜ…)」


「ありがとうございます。
それでは話させて頂きます。

私たちが今回ライジングサンのみなさんに会いに来た理由はただ一つ…


あなた方に会って頂きたいんですよ…
“キングのリーダー”に」


「!!!
リーダーに会うだと…?」


「ど、どーいうつもりよ!?
それで私たちを殺そうって気!?」


「………
どうやらあなた方は、私達のことをえらく誤解してるようですね。

そんなつもりはございませんよ。
リーダーがあなた方に直接お会いしたいらしくてね…」


「チッ…怪しいな…」


「さぁ、エーコ。例のものを」


エーコは善に、ある一枚の紙を手渡した。


「ん!?これは…?」


「それはキングのアジトが書かれた地図です」


「!!!」


「そこに3日後の夜10時、みなさんで来てください。

そこに私達、そしてリーダーが待ってます」


(アジトだと…?
そんなもん簡単に教えるか?フツー…

こいつは…罠か…?)

「ちょっ、ちょっと待て!!
話は分かったが…

まだ俺たちが行くとは決まったわけじゃないぞ!?」


「分かっております。だから3日後としたのです。

考える時間が必要だと思ったのでね」


「………」


「話はこれだけです。
3日後。私たちはその場所で待ってます。

来てくれることを願ってます…


おい、エーコ帰るぞ!」


「わ、分かってるよ…」


「ちょっと!おい!!」


エーコと黒崎は、用件だけを伝えると、おとなしく帰って行く。


「いいのか…?追わなくても…」


「………」


善は、どうも腑に落ちない点があったからか、後を追う気にはなれなかった。

それともうひとつつとして…
今やっても勝てないと判断したからなのかもしれないが…


「い、行っちゃったわよ…あいつら…」


「あ、あぁ…なんだかよく分からなかったな…

本当に話があるだけだったのか…
しかし、善…

キングのアジト…あまりにも怪しすぎるな。
行くつもりなのか…?」


善は少し考えたあと、答えた。


「まだ時間はある。ちょっと考えさせてくれ…」


「あぁ…そうだな…」


いつもなら真っ先に勢いだけで答えてしまう善だったが

ここばかりは少し冷静になっていた。


キング…
こいつらのすることには、善達の理解のできないこと、不可解なことがいっぱいある…

だが、それ以上に大悟には気になることがあった。


それは…やはり…



レトインの存在だった。


(キング…確かに気になることばかりだが…

レトイン…何よりおまえの存在が一番気がかりだ。
仲間の中に、こんな謎だらけのやつがいることが、何よりもの不安…)


大悟は一人静かに考え事をし始めた。
レトインは一体何者なのか、ゆっくりと考え出す。


志保は、まだ思うように体を動かせず、体を休めていた。



思えば、ライジングの一同は、ようやく体を休める時間が来たのだ。

ジョーカー、そしてキングと、一切体を休める時間などなかった。


そんな休息を味わう中、レトインが善だけに聞こえるように、耳元で静かに言った。


「善…………」


「えっ!?なんだよ…よく聞こえねぇって…」



善とレトインが話していることに、志保と大悟は気づいてない。

特に大悟は黙々と一人で考え込み、一人の世界に入っている。
まるで周りの声など聞こえない。


大悟には、ある一つの仮説があった。


(レトイン…おまえはなんらかの“リミテッド”だ…
間違いない…

以前、おまえは善に強く言った…



“キングは相手にするな。ジョーカーだけを気にしてろ”



俺はこれがずっとひっかかっていた…
だから俺は思ったんだ…



“レトインはキングの一員。いや、もはやキングのリーダー”



そうなのではないかと…しかし…


そうならばなぜ、俺たちとキングが戦っていたとき、戦いを止めなかった?

いずれ俺たちも邪魔な存在となるからなのか…?


だが黒崎は言ったな。
“キングのリーダーに会って欲しい”と…

そうなるとレトインはキングのリーダーではないのか?
はたまた、レトインはキングとは全く無関係なのか…?


レトイン…
おまえは一体…)


ひたすら考え込む大悟に、水を差すように志保が大悟を呼ぶ。


「ねぇ!大悟…」


「………」


集中していた大悟には、志保の声は届かない。
それでも志保は大悟をしつこく呼ぶ。


「ねぇ!!大悟ったら!!!」


「!!な、なんだ!?」


「いないんだけど」


「いない?」


「そうよ。いないんだよね…
善とレトインがどこにも」


「!!!
なっ、なんだと!!??

さ、探せ!!早く善を探すんだ志保!!」


突然慌て始める大悟。
志保にはその理由がよく分からなかった。


「何をそんな焦ってんのよ…
すぐ帰ってくるとは思うけど」


「いいから!!!早く善を探すんだ!!!」


「なんなのよ…分かったわよ!!」


(別に決まったわけではない…

だがレトイン…貴様は信用できん…
何が起きても不思議ではない…


嫌な予感がする…
善…善が危ない!!!)




第27話 "消失" 完
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