3BECAUSE 第23話
ライジングサンVSジョーカー四天王・綾音


綾音の能力に苦戦する中、ライジングサンのメンバーはお互いを“信頼”することで

最後の“希望”に勝機を残し、誰一人あきらめることせず立ち向かっていた。


志保のやるべきことはひとつ。
攻撃の起点である、ギターを破壊する。

まずは発射口を潰す。それこそがレトインが見いだした策だった。





3BECAUSE

第23話
 「失われた希望」





「発射口になってるギターを壊すわけね…
分かったわ!やってみる!」


善と大悟は、志保に全てをかけるしかなかった。


「頼んだぞ!!志保!!」


「私のギターをですって…?
そんなこと、絶対させないわ!!」


勿論綾音が、簡単にギターを壊させてくれるわけがない。
それだけは必ず守ってくる。


「志保なんか…近づかせないようにしてあげるわよ!!」


綾音は、今奏でていた“怒りのメロディー”を、更に激しく引き始めた。


「うっ…!!」


善と大悟が、綾音の魔術に引き込まれていく。


「だぁ~…くそっ!!」


今までは善と大悟が斬り合っていたが、今度は善達は志保とレトインに攻撃をし始めた。


「志保!危ねぇ!!」


善が志保にイフリートソードで攻撃を仕掛ける。


「もう!!!」


志保が水のバリアの壁を作り、善の攻撃を食い止めた。


「何やってんのよ!!」


「す、すまねぇ…」


レトインも、大悟の攻撃をなんとかかわす。


「チッ…バカ野郎共が…

(こんな状況じゃ…作戦もクソもあったもんじゃない…)


「はははっ!!例え志保に私の能力が効かなくても、
あんたを倒すことなんて容易いことなのよ!!

作戦なんか立てたって、そんなの無駄よ!!」


そう言った綾音に対し、大悟が言った。


「いや…無駄なんかじゃねぇな」


「!!なんですって!?」


「もうこんな情けねぇ思いはごめんだ。

志保。おまえの能力は俺達の能力に“相性”がいい…」


志保の持つ水の力は、大悟の土の力はもちろん、
善の火の力にも相性は決して悪くはなかった。


「……?それがどうしたのよ…?」


「俺達はもう、使い物にならねぇ…

だからいっそのこと、俺達を倒してくれ!!」


「!!!
何言ってんのよ!ふざけたこと言わないで!!」


大悟が言いはなった奇策に、善が笑い出した。


「へへっ!大悟!それは名案だな!!」


「善!!あんたまで何を言って…」


「確かに大悟の言う通り。俺達はいても、足手まといの何者でもねぇからな…

俺達はかえっていない方が、やつと戦い易くなるだろうよ!!」


「そんな…そんなこと私にはできないよ…

それに…私、あんたら二人を倒す力なんて…」


大悟の策に対し、レトインが冷静に現状を割り出していた。


(もし志保の体力が万全でも…
善と大悟を倒すことなんて不可能…

ましてや今は、志保はボロボロの状態…
この作戦は…


失敗する。
しかし……)


大悟の言った作戦は失敗するであろう。
しかし、今の状況では、この作戦にかけるしかなかった。

うまくいくはずないと思っていても、もうその手しかなかった。


「なんだそのバカな作戦は!?てかそれって作戦?
単なる自滅?

興味あるね…見てみたいよ!どんな結末になるのかさぁ!!」


綾音が嬉しそうに、またギターを激しく弾き出した。

すると、一斉に善と大悟が、引き寄せられたかのように志保のもとへ向かっていく。


(く、来る…私にできるの…?
こんなメンタルも体力も残り少ない私が、二人を倒すなんて…

どうすれば…どうすれば…)


志保の頭に不安がよぎる。
私に二人は倒せるのか?それどころか、私の方がやられてしまうだけなのではないか…?

しかし、刻々と“その時”は迫り、二人が徐々に自分の所に近づいてくる。


「はははっ!見せてよ…見せてくれよ!!

志保が仲間に殺されるところをさ!!!」


綾音には“先”が見えていた。
志保が二人を倒せるはずがない。

結末は…分かり切っている。


善が叫んだ。


「志保!!俺達のことは気にすんな!!
思いっきし行け!!!」


(違う…そんな心配じゃないの…
私はあなた達を信じてる。

大悟や善がそう言うなら、信用して私はついていくよ…
けど…私があなた達を相手にして勝てるかどうか…)


志保の不安は大きくなるばかり。
そして、“その時”はついに来た。



終わる……



志保の頭には“死”がよぎった。

この時点で、力どうこう以前に、まず気持ちの面からして、志保はすでに“終わっていた”。


善と大悟が、剣を志保に向かって大きく振りかぶった。

そして二人が、一斉に剣を志保に振り降ろす。
剣が志保の体に触れる、その直前だった。


大悟が小さな声で志保に言った。


「バカ野郎…おまえが俺に勝てるわけないだろ…

倒せとは言ったけど…誰が俺に“勝て”って言ったよ!?」


「!!!」


この時、志保は瞬時にひらめいた。
大悟の狙い、大悟が私に何を求めていたのか、ギリギリのとこで志保は気付いた。


そして、志保はすぐさまリミテッドの技を使った。


「“ウォーター エリア”!!!」


すると、志保を中心にして、志保の周りの地面に大きな水たまりができた。


「うぉっ!!なんだこれ!?」


「な、 なんだと!?」


綾音は驚きの光景を目の当たりにした。

志保が作り出した“ウォーター エリア”


そこには、志保を斬りかかりにかかった善と大悟が、見事なまでに

“ウォーター エリア”の餌食となり、体半分ぐらいがその水たまりに浸かり、
体が抜け出せないぐらいにハマっていた。


「か、体が…この変な水たまりにハマって動けなねぇ!!」


けど、その“動けない”と言うことは、こちらにとっては好都合だった。


「まさか…大悟…貴様!!最初からこれが狙いで…」


「フン…志保とはジョーカーにいた時、幾度となく訓練と題して戦っている。

あいつの持ってる技は、全部頭に入ってる」


「おのれぇ!!!こざかしい真似をしやがって!!!」


大悟が、にやけながら志保に言った。


「ギリギリのところで大正解だな!

あと少し気づくのが遅かったらアウトだったけどな!!」


「ホントよ…一か八かの大博打ね。
生きた心地しないわ」


「“信じてた”…おまえなら気づいてくれると」


「気づかなかったら、一体どーするつもだったのよ!?
信頼しすぎるのも、ちょっと問題ね」


「これで綾音の術が俺達にも効かなくなったはいいけど…

一向にこの水から抜け出せなければ、俺達からの攻撃もできねぇぞ!?」


「まぁ…またさっきみたいに仲間同士で斬り合ってるよりはマシだろ」


「それとその“ウォーター エリア”は、私のメンタルが続く限り、ずっと消えないから。

この勝負が終わったら解いてあげる」


大悟の策は、レトインすらも驚かした。
予想だにしない出来事だった。


(やるじゃないか…大悟。
だが…この“ウォーター エリア”って技…

使用している間、メンタルを消費し続ける…
今の志保に、そんなメンタルは残っていない。

早く勝負を決めなければならない…
時間が限られている。それに…


これで、やつの音の魔術にかかることは無くなったわけではあるが…

だが、“それだけ”だ。
志保と綾音の1対1の勝負…

この勝負に志保が勝てなければ、全くもって意味がない…)



大悟の作戦により、綾音のサウンドリミテッドによる、音の魔術は通用しなくなった。

しかし、やっとここまできて、初めてスタートラインに立てたと言うべき状況になっただけだった。


ここから先は、志保と綾音の真剣勝負。
ようやくまともな戦いができる。


そんな段階に来ただけでしかなかった。
なのに、すでに志保はボロボロ…

こちら側の方が、一方的に不利な状況であった。



術を封印された綾音であったが、余裕の表情を見せてくる。


「まぁいいわ…もっと仲間割れを見ていたかったけど…

これで別に私が負けたわけじゃないし」


「………」


「志保!!やつの“ソニックブーム”に気をつけろ!!」


「えぇ…分かってる」


レトインが志保に助言をする。


「志保…ソニックブームは相手との“距離”を頭に入れて動け。

今の距離は最低でも保ち続けろ!それ以上はヤツに近づくな!
近づけばソニックブームが体に届いてしまうかもしれん!!」


「そうね…分かったわ!」


綾音が志保の方へ、一歩近づく。

すると、志保が一歩綾音から離れる。


一定の距離を保ったまんま、お互いが探り合いを続けた。


(これでは…なかなか攻撃をこっちから仕掛けられんな…

しかし、志保は“ウォーター エリア”を張ってる…
こんな悠長なことをしていたら、メンタルを切らして終わってしまうぞ…!?)


何かいい策はないか、レトインが考え出す。
志保のメンタルが切れる前に、何かいい案はないか、考え込んでいる。

すると、綾音が突如話し出した。


「ねぇ…飽きたんだけど…」


「!!!」


「もう、終わりにしていいかしら?」


「!!!
終わりにするって…一体…」



この時だった。
ようやくメンバーが、ある“大きな力の存在”に気づいたのは…


(!!!
この力は…まさかこいつ…今までずっと…?)


ライジングサンのメンバーが、気づくわけがなかった。
今のこの状況で、そんな余裕などはなかったからだ。


「じゃあ…終わりにするね?」


そう言うと、綾音は先ほどまでとはギターを弾いていた“逆の手”でギターを弾こうとした。


大悟もようやく“大きな力の存在”に気づき、驚きを隠せないでいる。


(そんなバカな…四天王のレベルとなると、こんなことまでできると言うのか!!??

あいつは…今まで“右手”でギターを弾いていた…
俺達を術にかけるために、“右手”でギターを…


しかし、その間に、あいつは動かしはするが、力を放つことのない“左手”で…


今までずっと力を溜め続けていた!!!)

「離れろ!!!志保!!!
今すぐヤツから!!!」


「バカだね…今から放つソニックブームは

“そんなレベル”じゃない。



バイバイ」


綾音は“左手”でギターを強く弾いた。




ライジングサンのメンバー全員に“何か”が走った。



レトイン…そして、志保…
二人が倒れた。


志保が倒れたため、“ウォーター エリア”の技も解かれた。



「ぐっ……なんちゅう力だ…
志保…志保は…?」


善が血だらけになりながら、ゆっくり立ち上がる。


「くっ……」


大悟、レトインも、なんとか立ち上がった。


レトインは今まで無傷であったが、善と大悟はすでに傷を負っている。

だが、元々タフな二人。こんなところでくたばるわけにはいかなかった。


レトインに遅れて、善と大悟もなんとかして立ち上がった。



しかし…志保は…




「志保は…息はある。かすかに…
死んではない…

けど…恐らくもう…この戦いで目を覚ますことは…」


綾音が大声をあげて笑う。


「はっはっはっは!!!今の攻撃を受けて死なないだって?
あいつは本当に人間かい!?

今のでトドメを刺せなかったのは残念だけど…

でもさぁ…
この勝負、見えたね」


綾音がまた、ギターに手をかける。
また始まる。綾音の魔術が…


“怒りのメロディー”


「これは退屈だね…あとはあんたらが勝手に潰しあうのを眺めてるだけか!!」




ライジングサンは、最後の希望である、志保を失った。

そんな一同に、もう望みはない。



(終わるのか…?俺達…

どーすれば…どーすればいいんだよ!!!)





第23話 "失われた希望" 完
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