3BECAUSE 第19話
ジョーカーから送られた強力な刺客、大悟。

善は志保・レトインの協力を得て、見事打ち破ることに成功した。


そして、その大悟が善達といっしょに、ジョーカーを倒す味方となってくれたのだった。

そんなジョーカーにとっての悪い知らせが、リーダー・ジンの耳へとすぐさま連絡が入ってきた。


「ジンさん…ご報告が…」


「なんだ?どうした?」


「橘善の抹殺へと向かった、大悟が…

やられました」


「なんだと!?そんなバカな…
戦力的に確実に大悟が上…負けるわけがないはずだ…」


「それが…志保が善の加勢をしたという情報がありまして…」


「!!!
志保め…橘善に命を救ってもらって、情でもうつったか!?」


「それまでもか、今度は大悟まで善といっしょにいるという話が…

例の大悟の人質の件…志保が全てをバラした模様です」


「チッ…どこまで余計な真似をするつもりだ…」

第一の刺客、志保が善に敗れることは、ジンの計算の内に入っていた。

しかし、次なる刺客の大悟の敗北…


これはジンの想定外の出来事であった。

善と大悟にあった、あまりにも大きな力の差。
大悟が負けるはずはない。


だが、それも元ジョーカーの志保によって狂わされてしまった。

ジンは志保を支配することで、手中へとおさめていた。
それは単に志保をチームに拘束させていたにすぎない。


大悟の敗北は、そんな非情な事態が生んだ結果であり

ジョーカーは、自分で自分の首をしめる形となってしまったのだった。



大悟の能力に、とても相性のいい志保。
それでもジンには、まだ合点のいかない様子だった。


(おかしい…いくらなんでも、志保が加入しただけで、大悟が負けるわけがない…

やはり、人質の妹が死んでいることを証されたのが響いたのか…?)


「それともう一つ、ご報告が…」


「黙れ。俺は今考え事をしているのだ…
これ以上騒ぐのなら、貴様…」


「も、申し訳ございません!ジンさん…

しかし、これはとても重要な報告かと思いまして…」


「重要な報告…?何だ。言ってみろ」


「はい…先ほど話した通り、橘善に志保と大悟が加わったと言いましたが…

その他に、もう一人“謎の男”がいるという情報がありまして…
その男、レトインと名乗る男のようなんですが…」


「レトイン?誰だそいつは?何者だ?」


「いえ、それが一切素性の分からない男でして…

それが、どうも話によると、志保もこのレトインがいたせいで負けたと言われています」


「なんだと?そんなやつがいたなんて話、初耳だぞ…?」


「すいません…
その人物は、やたらリミテッドやジョーカーのことに詳しく、
橘善に色々とアドバイスを送っているようです」



「!!!
リミテッドやジョーカーに詳しいだと…?

待てよ…そうか…“あいつ”か。

あいつが橘善のそばにいると言うのか!!
これはおもしろくなってきたぞ!!

おい、アヤネを呼んで来い」


「アヤネ様!?ついに“四天王”を…

は、はい!ただいまお呼びして参ります!」




「何でしょうか?お呼びですか?ジンさん」


「アヤネか。次はおまえの番だ。橘善を葬り去って来い」


「やっと私の番ですか…待ちくたびれましたよジンさん。

では、ただちに橘善の抹殺に取りかかります」


「いや、待てアヤネ。
3日後だ。あと3日待っていろ」


「えっ…私の準備は万端です。
いざと言うときのために、いつでも行けるよう仕上げてあるんですが…」


「いいんだ。今は行かなくていい」


「………
そうですか。承知いたしました」



「はっはっはっは…まさか“あいつ”がなぁ…

これは楽しみになってきた!実に楽しませてくれるじゃないか、橘善!!」





3BECAUSE

第19話
 「ライジングサン」





強敵の大悟を倒せた一つの理由の、あの“奇跡”とも呼べる雨も、すっかり上がり

辺りは次第に明るくなり始め、夜の世界が終わりをつげようとしていた。


「そろそろ夜明けか…なんだか今日は散々な日だったぜ…」


善にとっては、驚きの連続であり、いくつもの波乱を巻き起こした一日だった。



まず、敵であるはずの元ジョーカー・志保が、レトインと共に舞い戻ってくる。

この時点で、善の頭の中では意味不明。


そして、新たなリミテッドの組織“キング”の存在…

もう善の頭は限界突破。理解不可能の状態に陥った。


それからジョーカーの大悟が味方になるなど、様々な出来事が起きていた。

善の頭がついていけなくなるのも無理はない。

それともう一つ…善の限界を突破していたものがあった。それは…



腹減った。



思えば、レトインが買い出しに行くまえ…というか…

善が親戚のおじさんの家を出たときから、善は何も食べていなかったのだ。


「おい…もうジョーカーの四天王だとか、キングだとかの話はどうでもいいよ…

まずメシ!メシをくれ~~!!
レトイン!!肉をくれーー!!」


「あぁ!そうだったな。忘れてた。
だいぶ遅くなったな」


レトインは少し離れた場所から、ビニール袋を手に持ってきた。


「よし。食え。全員分はあるだろうからな」


大悟がうれしそうに言う。


「助かるぜー!俺もちょうど腹減ってたからな~」


ビニール袋から食料を取り出す。
中には大量の缶詰が入っていた。


「缶詰…?なんでまた…」


「長期保存ができるからな。
次はいつ買い出しに行けるかも分からんしな」


「に…肉は…?さば…さんま…
に、に、肉は…?」


「たいして変わらんだろ。これも全部魚の“肉”だ」


「何だよそれ!魚の肉って!第一これは“身”って呼ぶんだろうがよ!

肉ねぇのかよ!最悪缶詰ならコンビーフぐらい用意しとけよ!!
俺は肉がなきゃ何も食わんぞ!!」


「うるさいわね。文句ばっかり言ってんじゃないわよ。
確かに缶切りがないところは、ちょっと文句あるけど…」


「それなら任せろ!俺のグランド・リミテッドの大剣を使って…」


「お、おまえ!なんて力の無駄遣い!最悪な野郎だな!!

って…おまえら!食い過ぎじゃね?ちょっとは俺の分も考えて…」


「だっておまえは肉以外は食べないんだろ?
いらないのかと思って」


「い、いや、冗談だから!待って!残して…俺の分も残して~~!!!」



善の雄叫びがこだまする。

そんな中、太陽が顔を出し始めてきた。
今日も新しい一日が始まる。始まりの朝だ。



「あぁ~…食った。久しぶりのメシだ。

それにしても、おまえらのせいで、余計疲れたぜ…
せっかくの久しぶりのメシだったと言うのに…」


「知るかバカ。おまえが一人で騒いでただけだろ」


「そうだったっけ…?でもよ…

ありがとな。おまえら」


さっきまでふざけていた善が、急に真面目に話し出した。


「な、何よ急に…」


「いやぁ~…なんだかさ…この朝日を見てたらさ…
ちょっと思っちゃって…」


「……?どーいうことよ?意味分かんないんだけど…」


「なんかさ…今日も一日終わったな…というか、また始まったなというか…」


大悟が首をかしげながら言う。


「何が言いたいのか、さっぱり分からん…」


「ほらさ…朝が来れば、終わるじゃん。ジョーカーの世界がさ」


「………」


「やっと不安やら恐怖から、解放されるっていうか…
けど、また今日の夜になれば、ジョーカーの世界が始まっちゃうんだけどよ…」


(不安や恐怖…
そうだよな…善はついこの間、リミテッドとして目覚めたばっか…

それですぐにジョーカーに狙われて…
そりゃ怖いよな…やつらがやって来る夜が…)



「ここ最近、この朝日を見てると、すげぇ落ち着くんだよね。

ほら、ここ何もねぇとこだから、よく日が昇るの見えんじゃん?

太陽ってこんな綺麗だったっけ…朝ってこんなに気分いいんだったっけかなって思ったりして…

こんなもんって言うのもどうかもだけど…
朝日を眺めてるこのときが、今の俺の一番の幸せ。

こんな当たり前のもんが、今の俺にとっての一番の楽しみだ」


「善……」


「作らないか?俺たちのチーム」


「チーム…?」


「あぁ。ジョーカーやキングが、夜の世界を支配しているならば、
俺たちはそいつらを終わらせるための存在。

あっちがチームで来るなら、こっちも対抗してチームで立ち向かう。
チーム名は…


“ライジングサン”


夜は必ず終わり、次第に朝が来る。
俺たちがジョーカーやキングの終止符を打つ!!」


「チーム…ライジングサン…」


「どうだ?ちょっと臭かったかな?
俺、レトイン、志保に大悟…

4人いることだし、チームって呼べるだろ?」


大悟がすんなりと答えた。


「フン…チームか…悪くねぇな。おもしれぇ!」


そして、レトインが言う。


「英語の苦手なおまえにしては、よくできた方だ」


最後に、志保が…


(私は善に借りがあったから、今回その借りを返すために来ただけだったんだけど…
今更やめますなんて言えない状況ね…)

「仕方ないわね。あんたのバカに付き合ってあげるわ」


「おっしゃ!決まりだな!!
俺たち4人、チーム・ライジングサン!!

迎え撃つはジョーカーにキングだ!いつでもかかって来いってんだ!!」



善たちは、チームとなって結束を固め、新たな気持ちで闇の組織を迎え撃つ。

そんな中で、ジョーカーの強大な力“四天王”がついに動きだそうとしていたのだった。


ジョーカー・四天王発動まで、あと3日。





第19話 "ライジングサン" 完
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