3BECAUSE 第8話
善の右手の甲にある、光輝く謎のマーク

それと同じ物がジョーカーのリーダーにもある


「なんなんだよ…このマーク!!ジョーカーの頭といっしょって…

一体なんなんだよ!!このマークは!?」





3BECAUSE

第8話
 「その先を導いた者」




「教えろよ…このマークは一体何なんだ!?」


「さぁ…私にもよく分からないわ」


「……?隠して、教えないつもりか?」


「悪いけど、そんなつもりじゃないわ。私、本当に知らないのよ」


どうやら志保は、このマークについて何も知らないようだった。


「レトイン!!何なんだよこのマークって!?おまえなら知ってんだろ!?」


「さぁ…な」


(あいつ…なんか知ってんなこりゃ?また隠すつもりかよ)

「おい!嘘ついてないで、早く教えろ」


「………」


レトインは数秒間の沈黙の後、静かに答えた。


「そのマークがある者にはな…

とんでもない“力”が眠っている。
普通のリミテッドにはない、特別な力がな」


「!!特別な力…?」


「それ…本当なの…?

(だとしたらリーダーにもその力が!?)」


「どうせこれ以上は教えるつもりないんだろ!?
それだけ分かればもう十分だ!!」


「あんた…何者なのよ?さっきから橘善に助言ばかりして…

随分リミテッドについて、詳しそうじゃない?
あんた…一体何者!?」


「俺か…?俺はレトインだ」


「そんなことは聞いてないわ!
あんたがなんでそんな“リミテッド”について詳しいのか聞いてるのよ!」


「はっ!こいつにそんなこと聞いても無駄だぜ。大事なことは一切しゃべりやしねぇ」


レトインは笑みを浮かべながら言った。


「フン…おまえも段々俺の性格が分かってきたじゃないか」


「あぁ…もったいぶらすのが大好きな、陰険な野郎だってことがな!

それより…あんたさぁ…あんたのことだよ」


善は志保のことを指差した。


「!!??」


「あんた…なんかおかしいよな…さっきからなんかひっかかるんだよ」


「な…何よ…?」



意味深なことを突然言い出した善に、レトインが興味を示した。


「ひっかかるって…一体何のことだ?善」


善は、にやけながらレトインに言った。


「はっ!何言ってんだよあんた…
あんたは俺に大事なとこは何も教えてくんないくせに、
自分は気になったら知りたいってか?

あんたには教えねーよ!」


「正論ではあるが…

まったく…生意気な野郎だ。

(さっきまで緊張しすぎて体がガチガチだったくせに…

どーやらもう冗談を言える余裕も出てきたみたいだな)」


「橘善…何を言いたいのかさっぱり分からないけど…

くだらないお喋りも、もう終わりよ。
“アクア・ウィップ”」


志保は右手に、水の武器を再び作り出した。


「チッ!またそれか!

でも…
さっきみたいには、いかないぜ?」


志保は勢いをつけ、善めがけて水のムチを振り下ろした。


「何度も同じ手を食うかよ!!」


善は自分が作り出した武器“イフリート・ソード”を見つめ


(こいつなら…いける!!)


そう、心の中で信じ込み…

向かってくる水のムチに対し、思い切って剣を振りぬいた。



善の“火の力”と


志保の“水の力”


力と力のぶつかり合い
その結果は…



火の剣による攻撃が、水のムチを真っ二つに切り裂き

善めがけて飛んでいった、水のムチは力を失った。
力のぶつかり合いは、善の火の力が勝った。


「よっしゃ!!思った通りだぜ!!」


「バカね…」


満身の笑みを浮かべて、勝ち誇っていた善を

あざけ笑うかのように、志保は笑った。


「!!??」


善は笑う志保の方を、瞬時に振り向いた。

すると、そこには次の攻撃を準備して待っていた志保がいた。


(こっちのムチは…単なるおとり!?
次の攻撃のための布石か!!)


「やられたら、やり返す。
それがジョーカーよ」


善が火の剣を振り抜きった直後。
剣を振り抜いた時に生まれた、明らかな“スキ”

そのスキを、志保が逃すわけがなかった。


「終わりよ」


時間をかけ、水の力を増築させた
高々と立ち上がる水の柱

その力は一気に放たれ、善めがけて飛んでいった。


「善!!!」


防ぎようのない、スキを突かれた攻撃。

善は剣を振り抜いた姿勢のまま、どうすることもできない



はずだった。
が、善は通常の人間とは思えない反射神経と

身体能力を発揮し、水の力の攻撃をありえない体勢から回避した。


「!!!
(こ、こいつは…!!
なんと言う身体能力の持ち主!!)」


レトインは、善が見せた奇跡とも言える動きに、度肝を抜かれた。


(今のがもし奇跡じゃないとすれば…
リミテッドとしての素質…そしてこの身体能力…

やはり善こそが…
俺が追い求めて続けていたいた人物だったと言うのか!?)



紛れもなく奇跡に思える善の動き


が、決して奇跡なんかではなかった。
これこそが善の持っていた身体能力だった。

ようやく本来の動きを取り戻したにすぎなかった。


「なんという身のこなしなの…」


「あんた知らなかったか?
他校とケンカさえしなければ、剣道で全国も夢ではないと言われた、
期待の星のこの俺を!!

まぁケンカが原因で出場停止くらったんだけどさ!」


「し、知らないわよ!そんなこと…

(それにしてもなんなの…?
さっきとはまるで別人のようなこの動きは…)」


「知らないか…ならいいや、それは…

それにしても…
やっぱりあんたなんかおかしいよな…」


「だから何がよ!?さっきからずっと言ってくるけど!!」


「………」


善は黙りきった後、静かに言った。


「あんたさ…



やりたくて“こんなこと”やってんのか?
自分で好きこのんでやってることなのか?」


「な、何よいきなし!!私はリーダーを尊敬している。
そのためならなんだってするわ!!」


「って、ことは…
リーダーのやりたいことを、おまえがやっているってことだな?

おまえは決してやりたいことではないのに」


「!!!
違うわ!!私がやりたいこと=リーダーのやりたいことなのよ!!

何!?私に説教たれるつもり!?」


「いや、そんなつもりはないんだけどよぉ…
あんたの目…


死んでんぜ…?」


「!!!」


「一度きりの人生だ。自分の好きなことやった方がいいと思うぜ?
あっ!俺たちは2度目の人生か…

って、笑えねぇ冗談だよな」


「だから違うって言ってんでしょ!!
勝手に決めつけないで!!

(なんなのこいつの緊張感の無さは…?)」


「嘘つくなって!!

でも、それにしてもなんでジョーカーなんて危ねぇチームに入って、
やりたくもねぇことやってんのかは分からねぇけどさぁ…」


善の説教とも思える話を、静かに聞いていたレトイン


「………」


そのレトインが、重たい口を開いた。


「なぜだか…知りたいか?

なぜこの女がジョーカーにいるのか…知りたいか?」


「!!!
知っているのか!?」


志保が鼻で笑いながら言った。


「何言ってんのあんた?

そんなのあんたが知ってるわけがないじゃない」


「俺はジョーカーについて…徹底的に調べ上げた。
洗いざらい、何もかもな」


「とんだハッタリね。
そんなわけあるはずがないわ」


「唯一分からないものと言えば…
ジョーカーの、その活動の


 “目的”


表には決して姿を見せないものの、略奪や暗殺…

裏で平気にそんな悪事を、しでかし続けている…」


(ジョーカーって…そんな恐ろしい連中だったのか…)


「おまえらの目的は何だ?
何でそんなことをしている?その理由を答えろ」


「なんで私があんたにそんなこと教えなきゃならないのよ。

それに…
“唯一”分からないことですって?よく言うわ」


「………


“水野 志保”16歳…」


「えっ!?

(なんで私の本名を…)」


「幼少時代の頃、病気で母親を亡くす。

そして小学生のとき、父親とキャンプに出かけたとき、川で溺れて死亡する。
が、そのとき父親の命が乗り移り、“リミテッド”となる」


「なっ、なんであなたがそんなことを知ってるのよ!?」


「だから言っただろ?

おまえらジョーカーのことは、俺が徹底的に調べ上げたって」


「あんた…あんた一体何者なのよ!!」


「大切な人を失ったおまえは、人生がどうでもよくなった。

そんなとき声をかけてきたのがジョーカーのリーダーだった。
だからおまえは…」


「やめて…もうやめて…

もうそれ以上言わないで!!!」


志保は水の力を突如溜め出した。


そして、さっきまでは善に攻撃していたが

矛先は変わり、今度はレトインに向けて水の力を志保は放った。


「!!!

(俺に攻撃を…かわせるか!?)」



ズバッ!!!



「おいおい。試合放棄か!?
俺との試合はまだ終わってないぜ」


水の力がレトインに直撃しそうになった寸前で

善が火の剣で水の力を断ち切り、レトインへの直撃は免れた。


「!!!

(アクア・ウィップまでもか、今の攻撃まで断ち切ったなんて…

こいつ…いや、こいつら一体何なのよ!?)」



余裕ぶった表情で、レトインを助けたように見えた善だったが…

内心は、今の善に余裕なんてものは、かけらもなかった。


なぜなら…レトインから志保がリミテッドになった理由

ジョーカーへ入った理由を聞いたからだ。


それを聞いたことにより、善は大きなショックを受けた。

それはなぜか…?
なぜなら、志保が背負っている過去が…



自分にそっくりだったからだ。



善も志保と同様、幼い頃母親を亡くしている。

そして父親が死んだ代わりに自分が生き返り、善はリミテッドとなる。


自分が歩んできた道と、とてもそっくりだった…



しかし、志保と大きく違う点が“一点”だけあった。

その一点はその後の者の人生に、大きな影響を与えた。


その善と志保の大きく違った一点…
それは…



出会った“人物”の違い。


善がリミテッドになった時、現れた人物は“レトイン”だった。

それに比べ、志保がリミテッドになった後に出会った人物…


ジョーカーのリーダーだった。



もし“あの日”レトインが俺のまえに現れていなかったら…

レトインから“すべて”を知らされていなかったら…


もしかしたら志保の様に、俺もジョーカーの一員になっていたかもしれない…



そう思うと、すごいショックだった…

衝撃と寒気が、一気に俺の体を走った。






第8話 "その先を導いた者" 完
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