3BECAUSE 第7話
早くもこの時が来てしまった…

もう“覚悟”を決めなきゃならないときが…


命を懸けた戦いが…
今、始まる。





3BECAUSE

第7話
 「善VSジョーカー・志保」





「こんなに早く現れるとはな…一度善を逃がしたのに…俺の計算違いだった」


「逃がしたんじゃないわ…チャンスを与えたのよ」


「チャンスだぁ!?」


緊迫感のある中、トラックの運転手が、車から出てきた。

そして、運転手は志保に近づいてきた。


「大丈夫か…?嬢ちゃん…?ケガはねぇか!?」


「………」


「しかし道のど真ん中に突っ立ってたら危ねぇぞ!?
もし引いちまったら大変なことになっちまうとこだったじゃねぇか!!

うちの“クロハダイシダの宅急便”の名に傷がつくとこだったんだぞ!?」


「邪魔よ…」


「えっ…!?」


志保は、運転手のおじさんに向かって、左手をかざした。


「!!!
あっ、危ねぇ!!!」


善はとっさに、おじさんのもとへと駆け寄り、だき抱えながら飛びついた。


そして志保の左手からは、リミテッドの水の力が放たれ

間一髪のところで、おじさんへの直撃を避けた。


「あっ…危ねぇ…」


「なっ、なんだ今の!?何者だ…おまえら!?」


「いいから!!車走らせて、今すぐこっから逃げろ!!」


そう言うと、おじさんは急いで車に乗り込み、この場から走り去っていった。



自分が思ってた以上に、体は不思議と動くものだ。


さっきまでは、人の命を自分の身を投げ出してまで救えるかどうかが心配だったが…

考える前に体が反応して、無意識のうちにおじさんを助けようと体が動き出していた。



「どうしてくれんのよ!?リミテッドの力を知った者を、生かしたまま逃がしちゃったじゃない」


「そんなこと知るかよ!!」


善と志保が言い合ってる中、レトインが静かに口を開く。


「もうやめとおけ…善」


「えっ!?なんだって!?」


「自分の身を危険にさらしてまで、他人を助けるのは」


「!!!」


「いつか自分の身を滅ぼすことになる。
だからこれ以降、そういうことはやめた方がいい」


「だったら…無関係な赤の他人は、放っといて見殺しにしろって言うのかよ!?」


「おまえにはこんなところで簡単に死んでもらっては困るんだよ!!
おまえはジョーカーを倒さなければならないんだ!!」


「またそれか!!第一まだ俺はそんなのやるなんて一言も言ってねぇだろ!!」


二人の話を黙って聞いていた、志保が今度は話に割って入った。


「ケンカならよそでやってくれる?
それになんか聞こえたわよ…

ジョーカーを倒すですって!?」


「あぁ。この橘善がな」


「まだやるなんて言ってねぇ!!」


「がっかりだわ…せっかくチャンスを与えたのに…」


「なんなんだよ…さっきも言ってたけど、チャンスって…」


「ジョーカーに入るためのチャンスよ。

“あの時”あなたを殺すことは簡単だった…
でも私はあなたを生かしてあげた…」


「チャンスって、そーいうことか…でも残念だったな。
悪いが俺はジョーカーになんて入る気、さらさらねぇ!!」


「そう…残念ね…



あなたをここで殺さなければならないなんて」


「来るぞ!!善!!」


(待ってくれよ…もう…なのか…?心の準備がまだ…)


俺の心の中の叫びも通じるわけもなく…
志保の目の色が、さっきまでと変わった。


志保は空にむかって手をかざす。

すると、バカでかい何かの音が響き渡る。



ゴゴゴゴゴ…



「なっ…何の音だ!?」



その音の正体は…



志保の背後に大きく広がる“海”の波の音だった。


「リミテッドって…力を体から放つだけじゃないのか!?」


「そーいわけじゃないの…だから私はこの場所を選んだの。
あなたが水の多い場所に来る、この時を待ってたのよ」


志保の真後ろには、水が柱のように立ち上がっていた。


(環境が…悪すぎる…)


そして…志保は挙げていた手を真下に振り下ろす。

その途端、水の柱から“水の力”が善めがけて飛んできた。


「避けろ!!善!!」


善は横っ飛びをして

なんとか水の力をかわした。


「はぁ…はぁ…なんとか…避けれた…」


「まだだ!!まだ来るぞ!!」


まだむこうの攻撃は終わってなかった。
いつの間にか立ち上がっていた、さっきとは別の水の柱が…

善に襲いかかってきた。


また善は横っ飛びをし、かわす


が、さっきほどのキレはなく…

水の力は善の左足をかすった。


「ぐっ!!
(あ…足をかすった…)」


「すばしっこい奴ね。だったら動けなくしてあげる


“アクア・ウィップ”」


志保がそう言うと、志保の右手に一斉に水が集まっていき

まるでムチのような形を作りだした。


「!!!
水の武器か!?」


「水って言ってもなめないでね…リミテッドで操られた水は、普通の水とは違うのよ」


志保は水で作りあげられたムチを、しならせるように横から振り

善の体を巻きつくように、縛りあげた。


「なっ!なんだこの水!!
確実に縛られた感覚がある!!」


「だから言ったでしょ?リミテッドの力をなめないでって」


水の力で縛りあげられ、身動きの取れないた善は

志保が強くムチを上に振り上げることにより、善の体は宙に浮いた。


そして数メートルの高さに舞った善を

硬いコンクリートの上に、叩きつけた。


「ぐわぁぁぁ!!」


「まだよ…まだこんなもんじゃ済まないわよ」


志保はまたムチを上に振り上げ、善を宙に浮かせ

もう一度地面へと叩きつけた。


「ぐわぁぁぁ!!」


「善!!!」


「これで身動きが取れないでしょ…?
終わりにしてあげる」


善を水のムチで縛り付けたまま

身動きが取れない状態で、志保は力を溜め始めた。


(まずい…これじゃ避けれねぇ…)


「善!!反撃しろ!!」


善は力を振り絞って、左手だけをなんとかムチから抜け出し

志保の顔面めがけて、火の力を放った。


「くっ…くらいやがれ!!」


「片手を抜け出した…なんてバカ力なの…

でも…無駄よ」


右手にムチを手にしいていた志保は、残された左手で水の力を放ち

善の放った火の力を打ち消すことで、自らの身を守った。


「打ち消された!!

(だめだ…もう終わる…)」


悪あがきとしか思えない善の攻撃も、不発に終わり

レトインは善の敗北を確定し、あきらめかけた



が、善の“真の狙い”は左手から放れた火の力による、志保への攻撃ではなかった。


水のムチに縛られ、自由の効かない右手から火の力を生み出し

水のムチに火の力を与え続けた。


そうすることにより、水のムチは火の力により気化し始め

やがて水のムチは消滅し、善の体は呪縛から解かれた。


「よし!成功した!」


「!!!
あなた…やるじゃない…
狙いは私への攻撃ではなく、体を縛り付けているムチをほどくことだったのね…
どうやらあなた…バカ力だけってわけじゃないみたいね」


(あ、危ねぇ…マジで死ぬとこだった…)


レトインは善に近づき、ポンと肩を叩いた。


「初めての戦い…初陣にしてはよくやってる方だ。だが…



動きが悪すぎる。
おまえの身体能力はその程度か?」


「うるせぇ!!」


「おまえ…部活はなんかやってたか?」


「部活!?なんでこんな時にそんなこと…」


「いいから。早く答えろ」


「高校じゃあ何もやってねぇけど…中学じゃ剣道を少々」


「剣道部か…じゃあ今のこの状況を…

 試合だと思え」


「試合!?」


「おまえは深く考えすぎている。命懸けの戦いだから当たり前だが…
あまりの緊張感と恐怖感にとらわれ、体が硬くなりすぎている」



そんな状況に陥っているときは、体がうまく動かないことはもちろん

体力、持久力も通常よりも遥かに消費する。



「これが…試合だって…?

(負け=死
随分とリスクが高けぇ試合だな…

まぁ剣道の試合に負けても、負けた悔しさと屈辱感は、死にてぇぐらい辛いもんだ…

そう考えれや同じようなもんか…
それに試合ってのは緊張感があるものであって、程良い緊張感なら、それが逆にいいってもんだ…)


レトインの一言により、善の気持ちはちょっとだけ軽くなった。

それともう一つ…
善にいいアイデアが浮かんだ。


「試合ねぇ…そいつはいいことを思いついたぜ」


不気味な笑みを浮かべると、善は集中力を高めた。

右腕にリミテッドの力を集め


火の力で剣の形を作り出した。


「できた!

“イフリートソード”

ちょっとあんたのを真似てみたぜ」


「あ、ありえない…なんてやつなの!!

(何なの…?この男の才能は…?リミテッドの力を放出するだけでも、
半年はかかるはずなのに…

私のを見ただけで真似して、リミテッドの力を集める、
力を操作することまですでに可能だなんて…)」


志保が善のリミテッドとしての素質に驚いてる中、志保は“あるもの”に気づいた。

善の右手の甲から光り輝く、謎のマークの存在に。


「!!!
あなたの右手にあるそのマーク…」


「えっ!?あぁ…これか…確かリミテッド全員にあるわけじゃないんだったよな…

おまえこれが何なのか知ってるのか?」


「同じじゃない…“あの人”と…」


「!?あの人……?」


「うちのチーム・ジョーカーのリーダーと同じじゃない!!」


「!!!
なんだって!?リーダーってことは…ジョーカーの頭!?

(何なんだよ…このマーク…一体何だって言うんだよ…)」





第7話 "善VSジョーカー・志保" 完
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