3BECAUSE 第26話
ジョーカー・四天王を倒したのも束の間

ライジングサン一同は“キング”とも対峙することとなった。


“アイス・リミテッド ”を有するキングに、志保は一瞬にして凍り付けにされてしまった。


「善!!おまえの“火”の力で、志保の氷を溶かすんだ!!

早くしろ!!!
じゃないと…志保は死んでしまうぞ!!!」


「あ、あぁ!分かった!!」


この状況で、唯一大悟だけが取り残された。


「なぁ…今更、やっぱさっきのはなし…

ってのはだめかな…?」


「なめんな。もう遅いし」



ライジングサンVSキング



最悪な状況下で、大悟は戦うことになってしまった。


「おい…レトイン。知ってるのか…?

キングについての情報も…」


「………」


「レトイン?はぁ?あんた誰だし。

あんたが私たちの情報なんか知ってるわけないし」


少し黙った後、レトインは話し出した。


「“氷川 英子” 17歳。

幼い頃、雪山にて遭難。その時リミテッドとなる。


詳しい情報まではない…知ってるのはその程度だ」


「!!!
あ、あんた…なんでそれを…」


「いや、レトイン…十分だ。

(貴様がジョーカーだけでなく、キングについても知ってるってことを明確にするにはな)」





3BECAUSE

第26話
 「ライジングサン・大悟VSキング・英子」





「なんであんたがそんなこと知ってんのか分からないし…
一体何者なのかは知らないけど…

あんたらには容赦しないし!!」


「それは…

こっちのセリフだ!!」


大悟は土の大剣・グランドセイバーを作り出し、英子に斬りかかった。


「甘いし」


すると英子は、氷の力で“何か”を作り出し、大悟の大剣を受け止めた。


「!!!

盾!?」


英子は氷の力で、強度のある“盾”を作り出していた。


「リミテッドの力ではね、なかなか珍しいんだよ。

強度あるもんを生み出せるってのは」


「そうだろうな…
だが、それがどうした。

そんな盾、俺の大剣でブチ砕いてやる!!」


「どうだかね…」


大悟は再度、大剣で斬りかかりにいった。

しかし、先程と同じように、盾で止められてしまう。


「あいつ…」


大悟の攻撃を見ていた善が、喝を入れに言った。


「おい!!大悟!!なんだその情けねぇ攻撃は!!

俺と戦ったとき、おまえの太刀筋は数倍も速かったぞ!!
そんな攻撃じゃ、蚊も止まっちまうわ!!」


「う、うるさい!!貴様は黙ってろ!!

いいから志保を救うことに集中してやがれ!!」


そこで英子が、にやけながら言った。


「あんた…よっぽど疲れてんのね。

そんなんで勝てるわけないし。あきらめた方がいいし」


「はぁ…はぁ…

だ、黙れ……」


大悟は限界に近かった。それも無理はない。

先程、四天王との戦いで、大悟はすべてを尽くしてしまっている。


大悟には体力、メンタル共にわずかしか残っていなかった。


「確かに今の俺じゃ貴様には勝てないかもしれん…

だが、まだ善がいる。
俺が勝てなくても、きっとあいつが何とかする」


「お、俺頼みかよ!!」


まさかの大悟の発言に、声を大きくした善。


「あんたバカじゃん?

あいつだって同じだし。あんた同様、力なんか残ってないじゃん」


「はっ…善を俺たちと同じ物差しで計るなよ。

あいつのメンタルの回復速度は、天下一品だ」


「言ってればいいし。だったらまずあんたから殺してやるし」


そう言うと、英子は右手を大悟にかざした。


「アイスニードル!!」


英子の手から、つららのような、先が尖った無数の氷が

大悟めがけて飛んでいく。


「ぐっ……

(くそっ…動けないことをいいことに…

だったらこっちは…)」


大悟がリミテッドの力で反撃しようとする。

グランド・リミテッド。英子が足を着けている地面から力を放つ。


しかし、その攻撃も英子には読まれていた。


「アイスフィールド!!」


英子は一旦攻撃をやめ、地面に触れるように力を放った。


「!!!
なっ、なんだ!?」


すると、英子の手の位置から、辺り一面の地面が凍りつき始めた。


「やっぱこれだけじゃ甘い…

私がもっと力を溜めていれば…
地面に触れてるあんたらごと、凍り付けにできたし」


「!!!」


今放った力では、地面を氷らせるので精一杯。

大悟たちの体ごと凍り付けに…
というわけにはいかなかった。


(なんて強力な力だ…アイス・リミテッド…

だが、こいつ…)


「どう?これで地面からの攻撃も防げるし」


「………

(やっぱり頼るのは…この大剣しかないか…)」

大悟が英子に近づき、大剣で攻撃を仕掛ける。


「だから…何度やっても同じだし!!」


これでは先程と同じ事の繰り返し。

大剣からの攻撃は、英子の盾によって防がれてしまう。


「くっ……」


もう大悟に力は残っていない。
大剣を振り抜くのがやっとであった。

そんな攻撃が、成功するわけもない。


「だからてめぇ!!大悟!!
何ふざけてんだてめぇは!!」


「はぁ…はぁ…

(ふざけてるわけじゃないっての…
力が…力がこれ以上出ないんだって…)」


ふらふらになりながらも、大悟はちらっと善の方に目をやる。

すると…


今、善のやるべきことは、凍り付いてしまった志保の氷を
溶かそうとしているはず…なのだが…


善は大悟と英子の戦いの観戦に熱くなってか

志保のことは全くもって放置。
ひたすら大悟に向かってゲキを飛ばしていた。


「!!!

バカ野郎!!てめぇこそ何ふざけてやがる!!
俺が何のためにこうやって一人で…」


「よそ見してるし。あんた余裕あんじゃん!」


大悟は善に目を取られ、わずかな隙ができていた。


「大悟!!危ない!!」


レトインが叫ぶと、大悟は瞬時に英子の方を見る。

英子は大悟が持つ大剣に、軽く手を添えていた。


「“絶対零度”」


「!!!」


大悟は英子の攻撃にギリギリに気づき、すぐさま大剣から手を離した。


「へぇ~…さすがじゃん!

こんな状況でも、冷静な判断できてるし」


英子の攻撃により、大悟持っていた大剣は完全に氷っていた。


「助かったぜ…レトイン…」


「おまえがよそ見なんかしてるからだ!!」


もし大悟があのまま大剣を握っていたら

今頃大悟の体も、いっしょに氷っていたところだ。


「危なかった…俺の体ごと持ってかれるとこだった…

しかし…貴様…」


実は大悟は、先程からひとつ気になっていることがあった。


「なんなんだ…貴様の戦い方は…?」


「どーいう意味だし…」


「今の攻撃然り、地を凍らす技も然り…

明らかにメンタルを多く消費する技。
それなのにおまえは、まるでもってメンタルの計算をしていないように見える…

なんなんだおまえの戦い方は…」


「そんなの簡単じゃん。私が誰よりもメンタルを多く持っているからに決まってるじゃん!!」


「なんだと…?誰よりもだって…?」


「そう。メンタルの多さだったら、私は誰にも負けないし。

リーダーにだって負けない…
ジョーカーのリーダーにだって負けるわけないし!!」


「!!!

(こいつ…この自信はいったい…)」


「だから…またもう一回、絶対零度を放って終わらしてあげる。

アイスニードル!!」


英子の手から再び、氷の無数のつららの矢が放たれる。
大悟にはもはや、かわす体力すらない。


「ぐわぁっ!!!」


「これでもう普通に動くことすらできない…

悪あがきもここまでだし」


英子がゆっくりと大悟の目の前まで歩み寄る。

きっと次の攻撃で、大悟は志保のように凍り付けになる。


(善…まだか…?あいつは一体何やってやがる…

まぁいいか…
俺がここで凍っちまっても、善がなんとかしてくれるだろう…

頼んだぜ…善…)


大悟は自分の終わりを覚悟した。
英子の手が大悟に触れる。


「バイバイ。


絶対零度!!!」


英子の手から力は放たれ、大悟が徐々に凍り始めていく。



その時だった!!!



「“火炎地獄”!!!」



「!!!
なっ、なんだし!?この炎と熱気は!!??」


「おいおいおい…またあきめちゃったのか?大悟くん!!」


先程まで、辺り一面は氷りに覆われてたのとは一点。

大悟達をぐるっと囲み、円をつくるように炎が立ち上がっていた。


「!!氷が…溶けていく!?」


その炎と熱気により、みるみるうちに大悟の体の氷は溶けていく。

そして…


「ケホッ!ケホッ!

……?
なんなの…この熱さは…?」


「志保!!!」


今まで凍り付けになっていた志保の氷まで溶け、志保が意識を取り戻した。


「善おまえ…志保の氷を溶かすのをさぼってるのかと思いきや…

このバカでかい炎の力を出すために、今までずっと力を溜めていやがったのか!!??」


「あったりめーよ!!

ヒーローは、ギリギリの間一髪んとこでやってくる。
そいつはお決まりなんだよ!!」


このデカすぎる力に、英子は腰を抜かした。


「あ、ありえるわけないじゃん!!こんなの!!

なんでよ!?さっきまで四天王と戦ってて、メンタルは切れてたはずじゃん!!!
それなのに一体こんな力が…どうして…」


驚いている英子に対し、大悟は言った。


「さっきおまえ…自分はメンタルの多さなら誰にも負けないって言ったよな?
ジョーカーやキングのリーダーよりも上だってな!

善はメンタルの多さじゃ勝てねぇかもしれねぇがよ…

“メンタルの回復の速度”
こいつなら善は誰にも負けねぇ!!

ジョーカー、キングなんて目じゃねぇよ !!!」


「!!!
そんな…ありえないし!!」


「覚悟しろよてめぇ…

志保を、大悟をいたぶってくれた分…
いや、利子がつくぐれぇ返してやっからよ!!!」





第26話 "ライジングサン・大悟VSキング・英子" 完
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